大統領に扮する安聖基「大変な職業ですよ」

 「大統領安聖基(アン・ソンギ)」が“就任”5カ月を迎えた。もちろん、スクリーンの中での話だ。今年4月にクランクインし、現在70%ほど撮影が進んでいるコミックメロ映画『ピアノを弾く大統領』の主人公、「大韓民国の大統領、ハン・ミンウク」の役だ。演技を始めて大統領役に初挑戦した安聖基は、撮影現場の内外で、半分は大統領になりきった心構えと姿勢で生活している。

 ただの俳優でなく、“国民”俳優と呼ばれる唯一の俳優。安聖基が大統領の役を演じるのは自然だ。これまでの韓国映画の不文律を破り、大統領の私生活を描くこの映画で、安聖基は“人間の顔をした”大統領を演じる。彼は変装をして地下鉄に乗り、浮浪者と言葉を交わす“かなり良い”統治者であり、自分の娘の担任の女教師(チェ・ジウ扮する)と恋に落ちる(映画で彼は妻と死に別れた設定だ)。

 「どのような大統領を選ぶべきか」という事が話頭となっている今、カメラの前で大統領を演じている国民俳優はどんなことを考えているだろうか。19日午後、狎鴎亭(アックジョン)洞のあるカフェ。大統領のようにベンツに乗って現われた安聖基さんは、トッポッキ(餅を甘辛く炒めた韓国料理)を注文した。

-今回の作品では久々の主演ですが、これまでは主に主演よりは助演でキャスティングされましたね。

「作品の中の私の比重が減ったとしても、私に与えられた役割にこんなものもあるんだなと、自然に受け入れます。それを受け入れなければ私自身も辛くなるし、また、不自然なことにつながりかねないから…。だから、私が希望する作品、私を希望する作品の調和を常に考えながら作品を選んでいます」

-大統領が恋に落ちる…、どんな映画ですか。

「素材も新鮮ですが、政治の話ではなく、『こんな大統領が私たちに一人くらいいても良いじゃないか』と思わせる映画なので、面白いです。映画の中で、市民に『私は大統領です』と話すと、『あなたが大統領なら、私は金正日(キム・ジョンイル)だ』とバカにされるなど、コミックなシーンもありますが、映画のあらすじはラブストーリーです」


-撮影現場だけでですが、大統領のように生活するのはどういう感じですか。

「豪華なリムジンに乗って、移動する時はボディーガード、秘書陣など、少なくとも10人余りが私を随行します。でも、いざやってみると、『大統領もたまらない職業なんだな』と思えましたね(笑)。私の後を付き添わなければならない人たちも大変でしょうが、常にその人たちを意識しながら動くこと自体、ものすごい負担だと思うんです。多くの人がその“座”に座ろうとしていますが、私は面白いとは思えません」

-あるアンケート調査で『21世紀に芸能人が大統領に出馬した場合、最も可能性の高い芸能人』に安聖基さんが選ばれましたが。

「そんな話は嫌いではありません。周りから悪口を言われずに生きてきているんだなとも思いますし」

-国民からそれほどまで愛される俳優なのだから、本当に政治をやってみる気はありませんか。

「政治は私と合わないと思うんです。大統領であっても何でも好き勝手にできるわけではなく、時には警護人の話を聞かなければならないじゃないですか。ある人がどんなに高い理想を抱いていたとしても、一旦政治界に足を踏み入れれば、その世界を共にしなければならない。でも、それって大変だと思うんです」

-安聖基は常に誠実だ。彼に『少しは遊んで、楽しむべきではないか』と聞いた。

「私も人間ですから、やりたいことも、遊びたいことも多いですよ。釣りやゴルフのようにアウトドア活動が大好きなんです。でも、長らく一定の領域で自分の場を守りながら活動するためには、意外に大変なことが多いんですよ…」

-最後に『年を取るということはどんな感じか』と聞くと、安聖基は姿勢を正してこう言った。

「最近は、昔の映画の中の自分の演技を見ていると、『あいつ、本当に若いな』と思ってしまいます。何かを成し遂げるためには歳月が必要みたいですね。チャーチルの若いごろの写真を見ると、チャーチルになろうとして途中で止めた人みたいじゃないですか。でも70歳になるとチャーチルの顔になっている。私もある時は、今も若すぎると考えることがあります。

」金ミョンファン記者
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