大学路(テハンロ)の創造コンサートホールで公演中の演劇『愛をください』(ニール・サイモン原作/金スンヤン演出)は、米国のある家庭が背景だ。祖母の家にやって来た二人の男の子が、父(李ジョンソプ)と祖母(朴ホソク)が部屋で話している間、居間で不満そうな顔をして待っている。しばらくした後、知的障害者のおばが登場して舞台を目茶苦茶にする。「あんたたちアイスクリーム食べるでしょ?ハハハ」
焦点の合わない目を大きく見開いて、四方を走り回る女。年明けにテレビ番組『挑戦1000曲』で“優勝”に輝き、お茶の間を楽しませてくれたノ・ヒョンヒ(31)だ。非常に頑固な母のために苦労して暮す、あるユダヤ人一家を描いたこの演劇で、彼女は心に傷を負った末娘ベラを演じた。『挑戦1000曲』の時と同様に、ここでもやはり気取った様子をまったく見せず、全身で熱演している。2時間30分間の演劇が終わった時、彼女の顔は鼻水と涙で一杯になっていた。
幕が降りた後、まだ涙目のままで鼻をかんでいるノ・ヒョンヒに会った。「ベルという役は、体は完全に成熟した女性ですが、精神が体についていけず苦しむ人物なのです。胸の奥に閉じ込められたものがどれほど多いことか…。感情が込み上げてきて抑えきれなくなってしまうこともよくあります」
ノ・ヒョンヒはタレントだが、ダンス力と歌唱力に優れ、毎年1、2回はミュージカルの舞台に立つ。しかし、小劇場での正劇は5年ぶりのこと。今年5月10日、アナウンサーのシン・ドンジン(34)さんと結婚して3カ月目の新婚だ。
「公演が終わってから家に帰ると、寝る時間が夜中の2~3時になります。どんなに遅くなっても、朝食は必ず作ってから寝ます。朝、主人が出勤する際に起きられないので、あらかじめ用意しておくんです」と言いながら笑う姿がやはり“新婚さん”だ。
ノ・ヒョンヒは今年の秋夕(チュソク/韓国の旧盆)連休にKBSが企画している特集ドラマで、全国のど自慢大会で優勝する田舍娘役で出演する。「『挑戦1000曲』のイメージで今回キャスティングされた」と彼女は言う。
しかし、テレビで歌う姿を見て楽しく笑った人が、今回の演劇では「私は、私を愛してくれる人が必要だったんです!」と言いながら泣き叫ぶ彼女を見て涙を流すことになりそうだ。公演は9月15日までで、ノ・ヒョンヒは金土日のみ出演する。
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