漫画家ユ・シジン「漫画の安物扱いを払拭したい」

 「厳しい話のようですが、基本的に余りにも安物扱いを受けているようで残念です。3000ウォンの本を買うのももったいなくて、300ウォンを払って貸し本屋で借りてきて読むじゃないですか。私は単行本の高価格化戦略もその突破口のひとつになると思います。書店で直接買って読んで頂けたらと思います」

 ユ・シジン(31)の初期作品『摩尼』(全2巻/時空社/各9000ウォン)がハードカバーの“愛蔵版”で復刊した。『摩尼』は新羅時代の處容(チョヨン)説話と現代の日常を組み合わせたファンタジー的な想像力で、既存の少女漫画の領域をより一層広めたという評価を受けた作品だ。

 ユ・シジン特有の冷笑的な台詞と感情描写で、読者たちの間に“ユ・シジン教”の幕開けを告げた初期作品だ。ソウル大学西洋史学科を卒業し、歴史学者の夢を諦めて漫画家への道を選んだユ・シジンは、個人の内密な世界を繊細かつ強固に描き出した作品を発表してきた。

 人に会うのを極度に避ける性格のうえ、自分の作品の復刊をきっかけに沈黙を破ったことで、やや恥ずかしそうにしていたが、ユ・シジンは断固としていた。「最近の漫画界はまともな状況でない」というのだ。各出版社は日本漫画の輸入の比重を増やして“カネになる”子供向けの漫画や若向けの漫画にだけ気を配り、大人も共感できるような少数派の雑誌は赤字を理由に廃刊した。

 こうした状況の中でユ・シジンのスランプも続いた。昨年10月以降、読者はユ・シジンの作品を見ることができなかった。代表作『クールホット』は6巻で中断され、『申命記』の執筆再開の見通しも立たなかった。

 ユ・シジンは「一方では個人的な理由で、また一方では構造的な理由で作品を描くのがとても大変だった」と告白する。「敢えて力を入れなくてもいい部分に不必要な力を加える作業スタイル」は自らを苦しめ、「それでも漫画界で10年近く作家生活をしてきたのに、残したものがあまりないのが現実」という言葉も本人を虚脱させた。

 まだ完全に回復した訳ではないが、ユ・シジンは今回『摩尼』の復刊作業を通じて「エネルギーを少し充電できた」と語る。来週出版される雑誌『ウィンク』でほぼ1年ぶりに新作の短編漫画を掲載し、今後も何本かの短編漫画を通じて本格的な“ウォーミングアップ”を始める予定だ。もちろん青少年向けの漫画とは距離を置きながらだ。

 ユ・シジンは「文化は基本的にバランスが合わなければならない」としながら「目先のカネに目が眩んでしまっては、数年後には一体どうなってしまうのか」と反問した。

魚秀雄(オ・スウン)記者
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