松久信幸氏「料理はお客さんの感嘆で完成する」

 今、世界のレストラン業界は「NOBU(松久信幸/53)」熱風だ。異質的な2つの世界を結合させ“フュージョン料理”という新たな地平を切り開いたスーパースター、日本料理の世界化に最も大きな貢献をした人物。

ロサンジェルス、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノ、東京、シドニーなど、世界14の都市に彼の名前を取ったレストランがある。一様にその都市で最も盛業しているレストランだ。「NOBU」はまた、俳優のロバート・デ・ニーロ、デザイナーのアルマーニなどとレストラン・パートナー関係を結ぶなど、華麗な顧客を誇りながら、「料理はファッション、そしてエンターテインメント」というこの時代のトレンドを示している。

 韓国料理の世界化のベンチマーキング事例となり得る「NOBU」の松久氏が、来月韓国を訪れる。8月22~24日、ホテル新羅(シルラ)で料理ショーを開く松久氏を、19日、東京の「NOBU」で会った。

-あなたの料理はフュージョンなのか。

「違う。ただ『NOBUスタイル』と呼んで欲しい」

-『NOBUスタイル』とは?

「私の料理の骨格は和食、中でも寿司だ。幼いごろ、兄について行った寿司屋の風景に憧れて、シェフになる夢を育てた。高校を卒業した18の時、新宿の寿司屋に見習いとして入り、料理人生を始めた。10年後、東京のレストランで働いていた当時知り合いになったお客さんが、ペルーのリマで和食レストランをやってみないかと提案してきた」

「私のメニューはペルーで自然に生まれた。日本では刺身はわさびとし蛯、油につけて食べるのが普通だが、私はチリやニンニク、オリーブオイルなど、新たなソースを作ってみた。年を取るにつれ、段々シンプルな料理に惹かれるが、若いごろ、私は旺盛な好奇心から新しい料理を作り上げるため、実験に実験を重ねていた」

 松久氏はその後、アルゼンチンに渡った。「イタリアの移民者の多いブエノスアイレスでは肉とパスタが人気だったため、和食はあまり成功しなかったが、やはり、新しいスタイルを吸収した」と言う。続いて、米国のアラスカで和食レストランを経営したが、オープンして間もない頃、火災で全焼してしまう。しかし、1987年、ビバリーヒルズにオープンした彼の名を取ったレストラン「マツヒサ」が、ニューヨークタイムス紙が選定した「世界10大レストラン」に選ばれるなど、大ヒットした。




-最高のシェフになる秘訣は何か。

「(右の胸をトントン叩きながら)他でもない、熱情だ。新たな食材料に出会えば、『さあ、これをどのようにして食べようか』と意欲が沸き立つ。一回で、自分の希望する味が出ることはほとんどない。シェフは人生の中で、常に忍耐というテストを強いられる。熱情と感覚が必要だ」

-料理に対する哲学は?

「顧客が希望する料理を作ること、顧客を楽しませることだ。料理は自慰行為ではない。『美味しい』という顧客の反応でもって完成されるのだ」

-材料の新鮮さを特に強調しているが。

「私の料理は新鮮さが命だ。材料の新鮮さの前ではいかなるソースも跪くものだ」

-ならばシェフはあまりやることがないのではないか。

「シェフの役割は“最善の道(The Best Way)”を探すことだ。世の中の無数の魚は味や触感が違う。目の前にタイとスズキがあるとすれば、これらをどのように料理した方が良いのか、本能的に知っているのがシェフと言える。世界最高の魚市場は日本にある。私たちは“コネクション”のおかげで、電話一本で最高の魚に対する情報を得て、配達をしてもらうことができる。信頼を元に築き上げた“アジア的”関係だ。レストランは口コミが最も重要だ。顧客を1人でも感動させれば、必ず2人、3人と増えて行く」

「全世界にある『NOBU』レストランのスタッフは、あわせて1000人余りになる」と松久氏は説明する。「『NOBUニューヨーク』には韓国人のシェフもいる。韓国、中国、フィリピン、英国、フランス、アフリカの出身で構成されたわがチームは多国籍軍だ」


-「料理もファッション」だと常に強調しているが、最近の流行は?

「まずは人の目を引かなければならない。美味しいだけでなく、見かけもよくなければならない。サービスは日増しに強調されている。もはやレストラン事業はグローバルビジネスだ。私は日本語、英語だけでなく、スペイン語、イタリア語を話す。世界各国の『NOBU』は、微細な差がある。ロンドンの人たちはインド料理の影響を受け、辛い料理を好む。米国の顧客は最も不平を言う。ニューヨークとロサンジェルスの顧客は健康食に敏感で、ミラノの顧客はてんぷら類を特に好む」

-韓国料理の世界化に対し、アドバイスするとしたら。

「ひとまず、話題になり、人気を得なければならない。私が今回、韓国を訪れるように、韓国のシェフが外国の有名ホテルなどと一緒にプロモーションイベントを度々行うのが好ましい」

 レストラン「NOBU」の入口にはハリウッドスターをはじめ、クリントン前米大統領らと一緒に撮った写真で埋め尽くされていた。また、「食事にきた映画関係者たちの頼みで『カジノ』などの映画に出演し、もうすぐ公開される『オースティンパワーズ3』にも登場すると付け加えた。

 「服装がとてもユニークだ」と言うと、「あ、このシュフ用のジャケットはアルマーニが特別にデザインしてくれたもので、ズボンは『Guess』のマルシアーノ社長が作ってくれた」と自慢した。

東京=チョン・ジェヨン記者
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