小学生の頃、“臭い”キムチの入った弁当を持ってきたと日本人の教師に叱られ、日本の子供たちからいじめられた少女。今では韓国を代表するベテラン女優になった白星姫(ペク・ソンヒ/77)は、今月初めに東京・新国立劇場で行われた韓日合同公演『その河をこえて、五月』に出演した際、マツタケのキムチ40キロを作って持って行った。
「劇場の関係者たちにプレゼントしたらとても喜んでくれて、楽屋で日本の俳優たちも本当に美味しいと言ってくれました。まさに隔世の感とでも言いましょうか」
この演劇は韓国の劇作家、金明和(キム・ミョンファ)と日本の青年座代表の平田オリザがシナリオを手がけ、韓国の演出家、李ビョンフンが平田オリザと共同演出するなど、韓日の演劇人26人が共同で制作した。韓国に住む日本人が公園へ行き、そこでピクニックに来た韓国人の家族と出会い、互いの人生の心の内を解いていくという内容だ。
カナダに移住しようとする韓国人夫婦と、それに反対する母親との葛藤。日本の学校になじめずソウルまで転校してきた日本人学生などを通じて両国社会の外と内を静かに描く。毎日新聞は「韓国の家族観を真剣に見せてくれ、韓日関係にもスポットライトを当てた素晴らしいゴール(goal)だった」とし、朝日新聞は「母親役の白星姫の演技が圧巻」と評した。この演劇は同じ出演陣と制作陣で28~29日ソウル芸術の殿堂・トウォル劇場の舞台で再演される。
「日本の俳優たちと60日間一緒に過ごしてみると、むしろ私が今まで日本に対して固定観念に縛られていたと思います。歴史にとらわれて彼らが『事業を共に進めることのできる同業者』とは考えられなかったんですよ。彼らが韓国人を見る時の目が大きく変わったということも感じました。テレビで光化門(クァンファムン)の街頭応援の姿を見ながら驚いているんですよ。その目はまさに尊敬の眼差しでした」
白星姫は1943年、劇団「現代(ヒョンデ)劇場」に入団して今年で芸能生活59年目だ。共演の禹賢珠(ウ・ヒョンジュ)は「白さんの当時の話を聞くと、まるで歴史小説を読んでいるようです。ハム・セドク、柳致眞(ユ・チジン)など…、演劇の教科書に出てくる人々の話が全て出てきます」と話しながら笑った。
彼女はニューヨーク大学の演劇学科を卒業して帰国した96年から俳優を始め、99年には『母さんは五十で海を発見した』で朴正子(パク・チョンジャ)の娘役として出演した。
「私はまだまだだと思っているのに、後で記憶力が落ちて台詞を覚えられなくなるとか、節々が痛くなって舞台に上がることが出来なくなったらどうしようとか。そんなことを考えると本当に悲しくなるでしょ?でも、今までに演じた役が400以上にもなるから、もうこれ以上は欲張りません」
「それに、今回の公演のお陰で、日本の人々に私たちの生き方を見せることができたようなので、心残りはありません…。
両国が本当の交流をするなら、まずお互いの生活スタイルを理解しなければならないと思うんです」問い合わせ(02)580-1300