『マリ物語』の李成彊監督「作品性を評価されたのが嬉しかった」

 「いったいどういうこと?大賞を受賞したなら電話してくれてもいいでしょう」

 『マリ物語(マリイヤギ)』で世界最大のアニメーションフェスティバルであるフランスの「アンシー国際アニメーションフェスティバル」の長編部門でグランプリを受賞した李成彊(イ・ソンガン/40)監督は10日午後、仁川(インチョン)空港の出国ゲートで彼を待っていた妻の安恵珍(アン・ヘジン/38)さんからこの言葉を聞いた。夫がグランプリを受賞したことを妻の安さんはこの日未明、新聞を見て初めて知ったという。

 ところが、李監督の受賞は韓国アニメーション界の歴史を塗り変えたという激賞を浴びている。韓国のアニメーション作品が海外の主要アニメーションフェスティバルで一度も大賞を受賞したことがないだけに尚更だ。

 「受賞会場で名前が呼ばれてスクリーンに『マリ物語』と私の名前が表示されましたが、特にこれといった実感が湧きませんでした。フェスティバル期間中に年配の方々が涙しながら私の作品を見て、サインを求められたりしましたが、むしろその方がよっぽど胸が一杯になりましたね。興行ではなく、作品性で評価されたのも嬉しくて」


 延世(ヨンセ)大学心理学科出身(81年入学)の李監督は、元々は画家志望だった。91年に大学を卒業後、西洋画を独学で学びながら、グループ展も数回開いた。しかし、グラフィックのためにパソコンを学び始め、コンピューターアニメーションに魅力を感じるようになり、アニメーション分野に方向転換した。

 95年、戦地で生き残り、さ迷う子供を描いた5分の短編アニメ『トルソ』を初めて作り、これまでに11本のアニメ映画を制作した。今回グランプリを受賞した『マリ物語』は、幼い頃に海辺に住んでいだ少年、少女の出会いを素材に、故郷に対する郷愁や幼い頃の夢を観客が振り返られるようにしたかったと言う。

 「高尚な召命意識でアニメーションの制作をするのはありません。何よりもアニメーションの制作が面白くて活動を続けているだけです」。監督はまた「現在、武侠を素材にした冒険アニメと『肌』というタイトルの実写映画を構想している」と語った。

愼亨浚(シン・ヒョンジュン)記者
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