過去の影を追う未来の捜査官『イエスタデイ』

 2020年、統一された韓国を背景に描いた『イエスタデイ』(チョン・ユンス監督/13日公開)は、SF映画の制作がいかに難しいかを改めて感じさせた。企画2年、撮影9カ月、総制作費80億ウォンなど、物量面でこの映画に注がれた努力は相当なものだが、こうした努力に比べ、この映画が楽しさと完成度で収めた成果は限界を示している。

 未来都市「インターシティ」の特殊捜査隊(SI)のリーダー、ソク(金勝友(キム・スンウ)扮す)は、正体不明の犯人が巻き起こす連続殺人事件の現場に投入される。犠牲者は全員、現場を退いた科学者たち。しかし、ソクは犯罪組職との銃撃戦で人質として捕まった息子を失い、犯人は雄鶏の形をしたペンダントを息子の首に残して行く。

 1年後、都心の真ん中で警察庁の長官が拉致され、現場にはまたそのペンダントだけが残されていた。長官の養女で頭脳明晰な犯罪心理分析官のヒス(金允珍(キム・ユンジン)扮す)が捜査チームに合流し、ソクは彼女が自分と同様に慢性の頭痛を患い、幼い頃の記憶がないという共通点があるということを知る。



 現在から18年しか差のない近未来を想定しているこの映画の映像は、感嘆が漏れるほど感覚的だ。銃弾の洗礼に飛び散る破片や、途切れるように降る雨粒の一つ一つが鮮やかな実感を伴っており、背景を暗くして人物を目立たせるなど、照明への細かい気配りもうかがえる。

 深夜の都心に浮かぶ最先端の広告飛行船、鑑識の現場で用いられる身分鑑別用の歯のスキャナーなど“近未来グッズ”のアイデアも目を引く。

 しかし、こうしたさまざまな点でこの映画の魅力を感じながらも、映画の中には入りにくい。それは何より、シナリオ自体の持つ問題のためだ。主人公の記憶喪失や科学者の殺害が、30年前の国家機関が遂行した人間遺伝子複製プロジェクトと関係しており、このプロジェクトの産物であるゴリアト(崔民秀(チェ・ミンス)扮す)が復讐に出て、ソクとヒスもゴリアトと切るに切れない関係に置かれているというかなり複雑な設定のうえ、ストーリーを理解するために観客は長い時間を要するだろう。

 エンターテインメントの楽しさに浸る余裕もないほど、頭を回転させなければならない。『ブレードランナー』を彷彿させるような、人間のアイデンティティーに対する監督の深い疑問は、粗いシナリオのせいで観客の頭や心に印象付けるには力不足だ。

 崔民秀扮するゴリアテはストーリー展開の外に押し出されたうえ、映画の前半、後半部分のわずかなシーンにのみ登場するなど、彼独自のカリスマを発揮する機会さえ得ることができなかった。

シン・ヨングァン記者
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