崔岷植「あの紅いじゅうたんは一生忘れられない」

 映画『酔画仙』の張承業(チャン・スンヨプ)が絵に酔ったように、張承業を演じた崔岷植(チェ・ミンシク)さんはカンヌでの7泊8日間ずっと、映画に酔いつぶれ興奮していた。そして、ついに自分が主演した映画が第55回カンヌ国際映画祭で韓国映画史上初の監督賞を受賞するという快挙を成し遂げ、彼の興奮は絶頂に達した。映画祭の閉幕式が行われた今月26日(現地時間)深夜、カンヌで会った崔岷植さんの声はまだ震えていた。

 「林権澤(イム・グォンテク)監督の受賞は、映画に人生をかけた全ての後輩たちにすばらしい鑑になるはずです。もっと早く受賞すべきだった。主演した私としては、これ以上の光栄はありません」

 崔岷植さんは「俳優として、カンヌで紅いじゅうたんを踏んだということ自体、一生忘れられない贈り物」と話した。

 「カンヌ映画祭は、映画に人生をかけた全ての人たちの夢です。初の公式試写会が終わって、タキシードに着飾った観客たちが10分近くも総立ちで拍手をするんです。胸がジーンとしました。何と言えばいいのだろう…、映画と映画人に対する礼遇を感じたとでも言いましょうか。映画をやってて、初めて受けた待遇でした」

 崔岷植さんの国際映画祭出席は2000年の日本ゆうばり映画祭に審査委員として招かれて以来、2回目。カンヌ映画祭の期間中、彼は英国のロイター通信、ベルギーテレビなど、海外のマスコミ6社とインタビューを行った。

 「試写会の時、『酔画仙』の英語字幕を見たら高級な英語のようでした。だからなのか、観客たちがなお更、真摯に映画を観賞しているように感じました。韓国でなら腹を抱えて笑ったはずの場面でもほとんど笑いが出なかったほどに。私たちに監督賞という大きな賞を与えたのは、西洋の観客たちも映画の持つ視覚的美しさの意外に、その中に溶け込んでいる哲学的意味にまで深く魅了されたのだと思います」

 彼に、俳優として『酔画仙』で最も難しかった点を聞くとA「画面で本物の当時の画家、それも奇癖を持つ画家に見せかける事に最も苦心した」という。

 「問題は“人物の匂い”を漂わせることです。私は撮影期間中ずっと、その人物について考えるスタイルです。極度に敏感になり、神経が剃刀のように鋭くなって、正常な生活ができなくなります。こんな私を、よくも我慢してくれた妻に感謝します」

 韓国映画界の一角では崔岷植さんがカンヌ映画祭の主演男優賞を狙えるのではないかという話も出た。しかし、これに対して崔岷植さんは「本当に私自信、心を空にし、何の期待もしなかった。カンヌに来て、世界一流の監督や俳優たちの姿を側で見て、肉声を直接聞けただけでも大きな光栄」と話した。

 「閉幕パーティーで、審査委員の1人のシャロン・ストーンが祝賀の握手を求めてきたんです。この手が、シャロン・ストーンと握手をした手なんですよ(笑)。

私が『俳優として堂々と世界の映画界の中心に招待されたんだな』とやり甲斐を感じられた、それだけで充分です」

カンヌ(フランス)=辛容寛(シン・ヨングァン)記者
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