「テレビと映画で少しだけ稼いだので、お金の心配はしないで演劇に集中できて本当にうれしいです。一昔前だったら稽古中にも、帰りの交通費の心配をしたものですが…」
映画『幸福な葬儀屋』でコミカルな葬儀屋の職員を演じ、『ユリョン』では残酷に殺されるコック長とし出演した。昨年、テレビドラマ『私たちは他人同士ではない』では、ずうずうしい脱北者(朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を脱出した住民)を演じ、「本当に脱北者ではないのか」とまで誤解された鄭殷杓(チョン・ウンピョ/38)が、本業である演劇俳優で“大ヒット”を飛ばしている。
「私はハサミを手にしないと痺れを切らしてしまうんです。体の中で一番重要な場所が頭ですが、それを守っているのが髪の毛ってわけです」
鄭殷杓がハサミを持って舞台を駆け回る演劇『理髪師、朴ポング』(コ・ソンウン作/チェ・ウジン演出/6月2日まで/トンスンアートセンター小劇場)は5月3日に開幕して以来、毎日満員御礼だ。一人前の理髪師になるのを夢見て、日々努力する青年が現実の壁にぶつかっては挫折するというストーリー。ワールドカップ(W杯)の韓国対フランスの親善試合のため、空席が出るのではないかと心配された26日も、150席が全て埋まり、補助席が必要なほど大盛況だった。
「本当に幸せです。タイトルロールは初めてなんですよ」。鄭殷杓はずば抜けた演技力にも関わらず、大衆的な人気とは距離が遠かった“遅咲きのスター”だ。 1995年東亜(トンア)演劇賞の演技賞と百想(ペクサン)芸術大賞の新人演技賞、昨年には映画『キリマンジャロ』で大鐘賞の助演男優賞も受賞した彼は、「人気は演技力の順位とは関係ないようだ」とにやっと笑うだけだ。
「高校時代に所属した演劇部の顧問の先生がきれいだという理由から始まめたわけですが、今後もこれで食べていこうと思っています。演劇だけではあまり稼げませんが、両親も私が俳優だということをなかなか認めトくれないので、テレビや映画にも出演しているんですよ。
演劇俳優なのか、映画俳優なのか、タレントなのか、コメディアンなのか、といろいろ聞いてくる人が多いんですが、ただ“俳優”という肩書き一つがあれば十分なんじゃないんでしょうか?」問い合わせ(02)766-3390