26日午後6時、国内最大の映画祭である『第39回 大鐘(テジョン)賞映画祭授賞式』が開かれた。
しかしこの日、大鐘賞の授賞式が行われるという事実を知っている人は少なかった。林權澤(イム・グォンテク)監督や俳優の崔岷植(チェ・ミンシク)など、多くの映画人がカンヌ映画祭の開催されているフランスへ行っており、一般の人々の関心は全て韓国対フランスのサッカーの親善試合に向けられていたためだ。
授賞式が行われた三成(サムソン)洞のCOEX周辺も大型スクリーンを見ながら声援を送るサッカーファンの熱気に包まれていた。毎年、大鐘賞の授賞式を放送してきた各地上波テレビ局も、今年はサッカー一色だった。こうして、一時はアジア最高の権威を誇ったこの映画祭は、ケーブルテレビで放送されただけだった。最悪のタイミングだった。
授賞式会場の雰囲気も“お寒い”のは同様だった。監督賞を受賞した『パイラン』のソン・ヘソン監督をはじめ、『家へ…』の李廷香(イ・ジョンヒャン)監督(脚本賞)、『猟奇的な彼女』の郭在容(クァク・チェヨン)監督(脚色賞)、中村トオル(助演男優賞)と方銀珍(パン・ウンジン/助演女優賞)など、受賞者らが大挙不参加となった。
受賞者を発表するために舞台に上がったある審査員が「サッカーの途中経過をお知らせします。先ほど2対1で…韓国が勝利しそうです」とサッカーの途中経過を伝えるというハプニングもあった。
ワールドカップ(W杯)の親善試合の日程が発表されたのは、今年の3月末。カンヌ映画祭が5月末に開かれることも映画界では常識だ。主催側の準備がお粗末だったという話だ。もちろん映画界のごたごたもあった。
共同主催の映画人会議が昨年総辞職して以来、これに慌てた映画人協会は単独主催の決断を下すことができないまま、執行委員会の開始自体をしばらく延期してきた。それに加え、毎年不公正の是非で議論を巻き起こしていた大鐘賞は、現在民間からの後援者を集めることができず、映画振興委員会だけが頼りの状況に陥っている。
予算執行を引き延ばした映画振興委員会側にも責任がある。当初、大鐘賞事務局側は4月20日に授賞式を行う予定だったが、映画振興委員会は4月9日に予算を承認し、23日に支援金を伝達した。事務局側は「度重なる日程の延期により予定していた世宗(セジョン)文化会館などの会場が確保できなくなり、COEXが空いている日を辛うじて確保した」と述べた。まさにこの日が、韓国対フランスのサッカー親善試合、カンヌ映画祭授賞式と重なる25、26日だったわけだ。
大鐘賞映画祭は来年には40周年を迎える歴史ある映画祭だ。しかし最近では、授賞式会場さえも確保することができず、「オリニ(子供)大公園」や「成均館(ソンギュングァン)大500周年記念館」などの各会場を打診するほどになってしまった。権威を得ることはそう簡単ではないが、失うのは簡単だ。どこまで国民の関心が遠のけば気付くのだろうか。