カンヌを虜にした韓国の「兄弟監督」

 第55回カンヌ国際映画祭の現場では『酔画仙』で公式コンペ部門に招待された林権澤(イム・グォンテク)監督に負けないほど注目を浴びている韓国人兄弟監督がいる。“70代老人の性と愛”を描いた映画『死んでもいい』で、批評家週間に招待された朴ジンピョ(36)監督と、母の死を見守る少年の心境を描いた短編作(15分)『リクエスト(Request)』でシネファンデーションに招待された朴ジンオ(32)監督だ。

 兄の朴ジンピョ監督は10年間、ドキュメンタリープログラムディレクター(PD)として活動してきたが、今回初めて長編映画を制作した。弟の朴ジンオ監督はニューヨーク大学映画学科の修士課程に在学中の映画青年。シンオさんはタレント宋彩丸(ソン・チェファン)さんの夫でもある。世界の全ての映画青年の夢を並んで叶えた兄弟をカンヌの現場で会った。

-『死んでもいい』に対して、米エンターテインメント専門誌『バラエティー』が“老人版の『愛のコリーダ』だ”と表現するなど、現地の反応が熱い。

ジンピョ:「2日間、6回の試写会を行った。米AP通信をはじめ、オランダ、日本、フランスのテレビなどと10回余りのインタビューを行った。お年寄りたちのためのパーティーのシーンでは観客たちが一緒になって拍手をし、歌い、口笛を吹くなど、映画を楽しんでくれたのが嬉しかった」

-映画では主人公の老人たちの性器が露出され、実際の情事のシーンが7分にわたって描写されるなど、破格的だが。

ジンピョ:「老人層に対する偏見を破りたかっただけ。体が年老いたからといって、セックスに対する欲望や愛に対する渇望が消えるとは考えない。私は“愛の瞬間”と盛り込みたかっただけで、ここの観客たちも純粋な愛の映像的表現として受け入れてくれているようだ。“タブー”に挑戦したという見方もあるようだが、2人の老人の社会的背景に対するナラティヴ(narrative)を省略したことでも分かるように、私はラブストーリーを伝えたかっただけだ」

-『リクエスト』は死んだ母の遺体の処理過程を見たいと請願する早熟した子供を描きながら、死をシリアスに描いているが。

ジンオ:「私自身、一時専攻を神学に変えようかと悩んだほどに、人間の霊魂に対して関心が多い。私の映画は表面的には暗いかもしれないが、少年が成長する過程を通じて希望のテーマを伝えているといえる」

-朴ジンオ監督にとって宋彩丸さんは妻であり、“映画同僚”のようだ。初作品の『ランチ(昼食)』が今年初め、サンダンス映画祭に招待された時も宋彩丸さんが制作者として一緒に参加したと聞いたが。

ジンオ:「学生時代(ソウル芸大)からこれまで、妻は私の最愛の同僚であり、すばらしい俳優だ。常に尊敬し、感謝している。今回の映画制作費2000万ウォンも妻が出してくれた。

(側で聞いていた宋彩丸さんは「余りにも無口なところを、他人はもどかしく感じるかもしれないが、私には魅力的」とし、「十数年間、常に真摯で変わりのないということが一番驚き」と話した)

 この兄弟監督は互いに誰よりも鋭い批評と暖かい激励を惜しまない。兄のジンピョさんは「映画を学んでいる学生の弟が『死んでもいい』を肯定的に評価してくれた時、とても興奮した」と言い、弟のジンオさんも「兄の“勇気ある作業”を誇らしく思う」と話した。

 しかし、兄弟が同時に世界最高の映画祭に招待されたことを最も嬉しく思う人は、きっと今年6月に70歳を迎える彼らの父に違いない。誰にでももらえるものでない、胸がいっぱいになるプレゼントを2つももらったのだから。

カンヌ(フランス)=辛容寛(シン・ヨングァン)記者
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