【映画レビュー】21億ウォンが空から落ちてきた『ひとまず走れ』

 コメディー映画『ひとまず走れ』(10日公開)はキャラクターの設定からして独特だ。友たち同士の高校3年生の3人組が主人公なのだが、その面々は尋常ではない。

 幼い頃、米国に留学し21歳で高校3年生に通っている金持ちのぼんぼん、ソンファン(宋承憲(ソン・スンホン)扮する)、金持ちの主婦たちを“イモ、コモ(女の親戚の呼び名)”と呼びながら誘惑するウソプ(クォン・サンウ扮する)、訪問客数が1ケタを超えないホームページの所有主で、一途なジンウォン(金ヨンジュン)。

 毎晩連れ合う彼らの車の上に、ある日21億ウォンの入ったカバンが落ちてくることで映画は本格的な騒ぎに巻き込まれてゆく。このカネをどうするべきか。分けるとしたら、果たしてこのカネで何をするのか。鐘路(チョンロ)警察署の新人刑事、ジヒョン(李凡秀(イ・ボムス)扮する)が彼らに何かを感じはじめ、カネの入ったカバンを3人組に落としてしまった泥棒兄弟がこの騒ぎに加わる。

 ひとまず走ってから考えようというタイトルは、映画の序盤に挿入され強力な印象を残すQUEENの『Don’t Stop Me Now』と絶妙な上昇効果を引き起こし、「とりあえずやっちまえ」流の展開に没入させる。

 演出とシナリオ両方を受け持った26歳の監督チョ・イソクは、デビュー作であるにも関わらず、隙のない構成を仕上げることに成功したように見える。テーブルに置かれた寿司の上に、良心の呵責で震える人物の様子をコンピューターグラフィックで挿入したシーンや、犬に蹴られて満月に突っ込まれるシーンなどでは、漫画的想像力も満遍なく発揮された。

 しかし、従来の韓国のコメディー映画を上回る映画的新鮮さや新人らしい覇気を充分に見せられなかったことは残念だ。

シン・ヨングァン記者
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