ドラマ『危機の男』で熱演中のタレント黄新恵

 9日午後、ソウル西大門(ソデムン)区に位置する弘益(ホンイク)大学の前。タレントの黄新恵(ファン・シンへ/39)はMBCテレビの月・火ドラマ『危機の男』の撮影をしていた。夫に捨てられ、職場まで失った30代後半の主婦、クムヒが道をさ迷い歩くシーンだ。

 通りすがりの女性たちが1人、2人と、カメラの周りに集まってきた。「あら、『危機の男』の撮影だわ」、「黄新恵って本当にきれいね」とささやく声が聞こえた。オムツが濡れたのか、抱かれている子供が大声で泣いているのに、見物に没頭している若いお母さんもいた。

 人々が言うように黄新恵は本当にきれいだった。目の下にほんの少し、時間の流れが見えたが、真っ黒の瞳は面と向かい合って話をすること自体、負担になるほど、大きく澄んでいた。1986年にドラマ『初恋』で初めて注目された時、そのマスクは“嫉妬の対象”だった。「人形のようにきれいなだけ」、「顔はきれいだが、演技はどうも…」

 ところが、時間の流れとともに変わった。一生、夫と子供のことだけを考えて生きて来た主婦の人生をリアルに描き出す顔、巷の主婦たちが惚れ込んでいる“俳優の顔”になっているのだ。

 「最近、周りから演技の話をよく聞くんですが、本当に嬉しいですね。正直な話、以前演技よりも外見の話をよく耳にした時は哀しかったんですよ」

 ドラマで40代の家長、トンジュ(金永哲(キム・ヨンチョル)扮する)は10年前の初恋の人であるヨンジ(ペ・ジョンオク扮する)と再会し、止めようもなく不倫に陥る。裏切られた妻のクムヒ役の黄新恵はこんな夫を憎み、苦しみながらも、容易に離婚に踏み切れない“普通の主婦”の痛みをリアルに演じている。

 血走った目で夫に向かって「あんたみたいな人間に申し訳ないことが何なのか、分かるはずがない」と泣き叫び、夫を奪った女性には「助けて。あの人を家庭に返して」と哀願する彼女。凄絶な表情と台詞から“人形”のようにきれいなだけだった過去の姿を思い浮かべることは容易ではない。

 「私も知らないうちにおばさんのしゃべり方が出てしまうんです。クムヒの悲しみが胸の底からこみ上げてきて、夢中で演技をしていることが多い。以前『恋人』の時も何かにつかれたような気分だったんですが、今回はもっとすごいんです」



 黄新恵は「私がクムヒのような状況に置かれたら、多分離婚すると思う」という。「でも、いざとなると書類に判子も捺せず、だからといって夫を許すこともできないクムヒの立場が本当によく分かるんです」。彼女は自分の感情を切実に表現したかったのか、「本当に」という単語を長く、力強く発音した。

 「夫婦の愛情を長く維持するのは自然にできることではないみたいですね。人間だから、大事なものが近くにいてもその貴さを知らないのもあるし。とにかく…、本当に難しいことですよね」

 黄新恵は来月ごろ公開予定の映画『ファミリー』で、ルームサロンのママのを演じている。今、仕上げの撮影の最中だという。「忙しくなってから娘(5)と一緒にいられる時間が少なくなったのが一番哀しいですね。母が娘の面倒を見てくれてるんですが、ある日、ふと気付いてみると娘が急に大きくなってるんですよ」

 前日、2時間しか眠れず、始終疲れた表情をしていた彼女は、娘の話題になると急に表情が明るくなり、語調もハキハキとしてきた。「あの子ったら、ママが出るからといって必ず『危機の男』を見てから寝るんですよ」

 インタビューが終わりかけたごろ、離婚の経験が演技にどのような影響を及ぼすと思うか、聞いた。「その話は止めましょう」。彼女の顔から笑みが消え、口を閉ざしたまま、ゆっくりと頭を横に振った。質問したことを後悔しながら、急いで次の質問「美貌を維持する秘訣」を聞いてみた。

 「暇がある時はエステティックサロンにも行くんですが、忙しすぎて思うほど神経を使ってないんです。何よりも運動ですね。

10年以上も前からエアロビックスとかをやっているんですが、美容にもいいし、体力維持にもいいですよ」

李ギュヒョン記者
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