大学路(テハンノ)の演劇舞台に戻ってきた俳優の李ジョンソプ(57)は「後輩たちの前で大人ぶっている」と話した。語尾を若干上げる女性のような話し方は相変わらずだった。「大人ぶるのって難しいんですよ~。1日1日演技が上達するところを見せなければならな「のに、それができないとまた恥ずかしいし~」
“大人ぶる”ことには経済的な意味も含まれている。ソウル斎(チェ)洞で「チョンガジプ」という韓国レストランを営んでいる彼は、レストランの2階を稽古場として開放し、演劇界の後輩たちに食事まで提供している。後輩たちの“空っぽのポケット”の事情を解決してくれるありがたい先輩なのである。
中学3年の時から演劇を始めたが、女性的なイメージでまともな俳優の道を歩めなかった彼が、今回は女性でも同性愛者でもない“シリアスな主人公”を演じる。「2002年ソウル公演芸術祭」公式参加作品である劇団ヒョンビンの『幸せな家』(ウ・ボンギュ作、金イルウ演出、9~29日ハクジョンブルー)で、人間に化けたキツネの役だ。
山奥で薬草を育てながら幸せに暮らしているソンさん夫婦の前に、ある日キツネ2匹が人間に化けて現われる。キツネに騙されたこの夫婦は自分たちが本当に幸せなのかと疑いはじめ、不幸に陥る。6日午後、大学路でリハーサルに励んでいた彼は、客席に座って舞台を見つめながら話した。
「この演劇、本当にやさしいんですよ。幸せは心の中にあるという話ですから。他人には理解できなくても、自分が幸せなら、それを誰かと比べてはいけないんですよ」
李ジョンゾプにとって演劇舞台は演劇のタイトル通り“幸せな家”だ。だから、彼の今回の出演は幸せな帰宅となる。彼は1990年代にテレビデビューをし、顔が知られるようになったが、本来は中学3年生の時から演劇をやっているベテランの演劇俳優だ。しかし、大人になった彼に“俳優”としての道は開けなかった。
「私が女性的なイメージだから適当な役がないというんですよ。最近は個性が重視される時代ですから、いろんな人が出て来てますけど、当時は違ってましたから。男性は格好よく、女性はきれいな人が俳優をやってました。だから、仕方なく演出をしました。大学に入学したのが1964年だったんですけど、1992年に『クニナラ』という演劇でジプシーショー劇団の団長役で舞台に立ちました。30年間、俳優をやれなかったわけですよ。本当に悲しかった。演出するのが恨めしいくらいだったから」
映画にも3回ほど出演している。躊躇しながら「主人公ではなかったですよね」と聞くと、彼は流し目で口の端を吊り上げながら笑った。「私に主人公は無理でしょう?そんな無理な欲は出さないって」
長期公演の計画を聞くと、「そんな、私もう57歳ですよ、長期計画なんて~」と否定した。「ただ、演劇をやっている後輩たちに勇気と力を与えられたらいいなと思って。後、韓国料理は世界最高だから、これからもずっと愛されたらいいなって。
そのくらいですよ~」問い合わせ:(02)3217-9256