「日本のドラマ」を見ていてふと気づいた

「体調悪くても出勤する」のではなく「体調悪ければ休む」という発想の転換

自分の健康は個人のものではなく、みんなの健康に直結するから

　久しぶりに面白い日本のドラマを見つけた。石原さとみ主演の『アンナチュラル』だ。不自然死を調査する東京都内の架空の法医学研究機関を舞台に、遺体を解剖して真実を究明する法医学者たちの活躍が繰り広げられる。毎回違うエピソードが早い展開で繰..

▲日本のドラマ『アンナチュラル』の1シーン。

「日本のドラマ」を見ていてふと気づいた

「体調悪くても出勤する」のではなく「体調悪ければ休む」という発想の転換

自分の健康は個人のものではなく、みんなの健康に直結するから

　久しぶりに面白い日本のドラマを見つけた。石原さとみ主演の『アンナチュラル』だ。不自然死を調査する東京都内の架空の法医学研究機関を舞台に、遺体を解剖して真実を究明する法医学者たちの活躍が繰り広げられる。毎回違うエピソードが早い展開で繰り広げられ、一度見出したら全話を最後まで一気に見てしまった。2018年のドラマだというのに、なぜ今になって見たのかと言うと、強制的な「週末巣ごもり」がもたらしてくれた想定外のご褒美だと言えよう。

　偶然にも、第1話のエピソードは中東呼吸器症候群（MERS）だった。中東出張から帰ってきた若い男性が突然死する。死因は虚血性心疾患。だが、これを受け入れられない両親が解剖を依頼したことからストーリーが始まる。出張直後、彼が会ったという協力会社の女性社員も翌日死亡した。偶然だろうか。毒物・劇物調査までした研究所は、最終的にMERSが原因であることを突き止める。

　男性が最初の感染者であり、「スーパー・スプレッダー」（多数の他人に病気を感染させる力が極めて強い感染者）だとされると、世論の非難が集中した。「息子さんのせいで敷島由香さんが死んでいるんですよ！」。男性の両親は腰を折るようにして謝罪し、父親は涙声で話した。「息子が無理を押して帰国したのは、会社を休んではいけないという気持ちがあったからだと思います。子どものころから、私は『風邪ぐらいで学校を休むな』と、『我慢強い男になれ』と、そう言い聞かせて育てました」。母親も言った「間違っていたのかな？」。

　疾病管理本部の鄭銀敬（チョン・ウンギョン）本部長の記者会見を思い出した。今年3月16日、新型コロナウイルス感染症に対する長期戦に備えた生活上の守るべき規則を紹介しながら、同本部長は「『体調が悪くても行く』という文化を『体調が悪いから休む』に変えられるよう、勤務形態や条件を改善しなければならない」と述べた。体調が悪くても出勤するという信念は、韓国社会ではまじめさの指標だったが、感染症が広がっている状況では社会に危害を加える恐れがあるためだ。

　勤勉さとまじめさで奇跡を起こしてきた国の国民らしく、我々韓国人は「行って倒れるかもしれなくても」学校や職場に行く。優秀賞はもらえなくても、皆勤賞をもらうのがまじめな児童・生徒だったし、どんなに体調が悪くても痛くても「出勤のハンコ」を押さなければ責任ある会社員として認められなかった。会社員の97％が「体調が悪くても我慢して働く」と答えたアンケート結果もあった（ジョブ・コリア調べ）。回答者の半数が「誠実に責任を果たす組織文化のため」と答えた。

　米ニューヨークで研修を受けていたことがある先輩は、風邪を引いた娘を学校に行かせたところ、教師からおしかりの電話をもらったという経験談を聞かせてくれた。「子どもが熱を出して咳もひどいから家に連れ帰ってくれ」ということだ。米国では、風邪のように移りやすい病気にかかった子どもが学校に行くと、みんなの迷惑になると考える。だが、そういう米国でも会社員の場合は違うようだ。ある法律コンサルティング会社は「米国企業の半数が体調不良をおして出勤する社員のせいで頭を痛めている」という調査結果を発表した。「Presenteeism」（プレゼンティーイズム＝病気でも出勤すること）の方が、「Absenteeism」（アブサンティーイズム＝病気で欠勤すること）よりも損失が大きいというのだ。無理な出勤よりも安心して休ませた方が良質な生産性につながるという話だ。

　「意地のあるバッター」として有名だった韓国プロ野球イ・ジョンフン選手は新人王を獲得後、打撃王に数回なったが、全盛期が短かった。「倒れるにしてもグラウンドで倒れたい」というモットーが問題だった。けがをしたら十分休まなければならないのに、痛いのを隠して試合に出て、けがを大きくした。構成員の健康は個々のものではなく、互いの安寧と仕事の持続性につながっていることを体感する時代。新型コロナウイルスは韓国社会の長年の美徳まで変えつつある。

　ドラマは想定外の展開で終わった。男性は中東で感染した最初の感染者ではなく、東京都内の病院から漏れたウイルスが原因で死亡したのだった。そう、彼も被害者だったのだ。

許允僖（ホ・ユンヒ）次長

朝鮮日報／朝鮮日報日本語版

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