死ぬまで一人の女性だけを見つめ続ける男性。何でもすぐに消費される現代にはなかなか見られない人間像だ。珍しい存在のため、現代の女性たちはそんな男性に憧れている。自分だけを見つめ続けてくれる男性、自分だけを愛してくれる男性を。ドラマ『奇皇后』のタファン(チ・チャヌク)はスンニャン(ハ・ジウォン)を愛し、執着し、死ぬ瞬間までスンニャンから「愛してる」という言葉を聞きたかった純情な男だった。
全51話と..
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死ぬまで一人の女性だけを見つめ続ける男性。何でもすぐに消費される現代にはなかなか見られない人間像だ。珍しい存在のため、現代の女性たちはそんな男性に憧れている。自分だけを見つめ続けてくれる男性、自分だけを愛してくれる男性を。ドラマ『奇皇后』のタファン(チ・チャヌク)はスンニャン(ハ・ジウォン)を愛し、執着し、死ぬ瞬間までスンニャンから「愛してる」という言葉を聞きたかった純情な男だった。
全51話という長丁場の撮影を終えた今、チ・チャンウクのタファン以外、ほかの俳優が演じるタファンを想像するのが難しいほど、完璧なキャラクターとして印象に残っているが、実はチ・チャンウクは2番目の候補だった。第1候補だった俳優が出演できなくなり、一歩遅れて合流したケースだ。プレッシャーもかなり感じたし、「下手したら大変なことになる」という覚悟で『奇皇后』とタファンに集中した。
「タファンは1話の中だけでも気分の差が激しかったです。笑ったり泣いたり、恐怖におびえたり。感情の起伏が激しかったんですが、それをどのようにつなげるべきか、伏線を敷きながら徐々に変わらなければいけないのかを監督や脚本家の方といろいろ相談しました。タファンは最初と最後だけを見ると、別人のように変わりますが、これをどう変化させていくべきかすごく悩みました」
自分を愛していない女性を最後までつなぎとめ、愛することは可能だろうか。解けない宿題のようなこの質問に対するチ・チャンウクの率直な考えは、タファンの愛は現実に存在しないファンタジーであり、不滅の愛は不可能だろうということだ。
「ドラマを見ながら『永遠の愛』にロマンを持つことができるじゃないですか。『ドクター異邦人』は医師の物語だけれど、現実の医師はあそこまでカッコいいわけがないし。現実には存在しなそうな医師の物語を展開しているからこそ、より熱狂し、物語的にも面白いと感じるのだと思います。タファンを演じながら、うらやましくもあり、実際にあんな風に愛したいと思いながらも、あのような女性が僕にいるだろうか、全てをささげたいと思う女性が現れたら、自分の人生が完璧になるのだろうかと思いました」
チ・チャンウクが『奇皇后』を選んだ理由も、タファンという人物がとても魅力的だったからだ。「台本のタファンはキュートで愛らしかったし、弱々しくて情けないけれど、憎めない人物でした。僕がやりたいことを役を通じてたくさんできると思いました。実際、女性主人公にとって何の得にもならない迷惑なキャラクターを愛らしく表現しなければならなかったし、憎たらしく見えたら面白くないだろうと思い、その部分についてはかなり悩み、一番大変な部分でした。どう表現するかによって微妙な違いが生まれ、少しずつ変わるんですよ」
タファンにいち早くなりきり、完璧に表現したチ・チャンウク。アンチファンも演技力を認めるほどの熱演で好評を博したが、本人は視聴者の称賛の声が気恥ずかしく、実感もわかない。ドラマ『笑ってトンヘ』で多くの視聴者から愛されたときは「むしろ自分の名前がトンヘだったら」と思うほど悩んだという。時間がたってみると、俳優が作品で人々に記憶されるのは悪いことではなく、自然なことだった。チ・チャンウクと呼ばれようと、タファンとして記憶されようと「誰かに記憶されること自体がうれしいこと」と話すチ・チャンウクの顔からは余裕が感じられた。
「どんな作品に出演しても勉強になるし、常に役に立ちます。一つの作品で突然演技が上手くなるのではなく、少しずつ磨かれていくのだと思います。作品がヒットしようが、そうでなかろうが、肌で感じるものが多いので、それが今の自分をつくり、これからの自分をつくるのだと思います。人生のターニングポイントは何だったのかよく聞かれるんですが、『奇皇后』に出演する前と後のチ・チャンウクは全く同じです。大きく変わったところはありません。僕自身や自分の演技は、本当に少しずつ変わってきたと思います」
「僕の演技哲学は、世間に振り回されず、自分らしい演技をすることです。だからと言って、世間を無視するということではありません。以前はインターネット上の書き込みを見て演技スタイルを変えたことがありますが、ずっと変えていくのも大変なことで、結局は自分というものがなくなりました。そのとき思ったのは、世間に振り回されたら『俳優チ・チャンウクはいなくなるだろうな』ということ。先輩たちを見ると、多くの哲学を持つ方々が多く、皆さんそれぞれ違います。僕も先輩たちのように、自分ならではのカラーを出しているところです」
スンニャンの愛を渇望していたタファンとして8カ月を過ごしたチ・チャンウクに「そろそろ恋愛しないと」とそれとなく話を振った。すると、チ・チャンウクは「恋愛したい」としながらも「恋愛しかけても忙しくなってできない。時々、踏み出すことすらしない場合さえある。恋愛は本当に難しいと思う」と言って笑った。
「この世には男性も多く、女性も多いので、僕だけを見てアプローチしてくる方は多くないと思います。だから恋愛は難しいのだと思います。実際、時間がないのが一番の問題です。頻繁に会えないし、規則的な生活ではないので。頭で理解はしていても、本人は嫌な感じ? (芸能人と交際するのは)もっとダメでしょ。同じく忙しいから。体が離れれば心も離れるのが一般的な愛のようです。ドラマの愛はファンタジーです」
不可能だらけの現実で1%の可能性を信じたくさせる女性たちのロマンとして急浮上したチ・チャンウクが、次の作品ではどのようなキャラクターで女性のハートをつかむのか、期待を集めている。
チャン・ウンギョン記者
チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版
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