過去の記憶をたどってみよう。ポン・テギュはユニークな俳優だったが、“分別のある大人になったら死ぬ”といわんばかりに、鋭い刃で全身を覆っていた。休むことなく活動するエネルギッシュな20代の個性派俳優として映画、ドラマで活躍してきたポン・テギュだが、その姿をしばらく見ることができなかった。その間、ポン・テギュは不遇の時期を過ごした。椎間板ヘルニアにより手術を受け、出演料未払い訴訟も起こし、不慮の事故..
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過去の記憶をたどってみよう。ポン・テギュはユニークな俳優だったが、“分別のある大人になったら死ぬ”といわんばかりに、鋭い刃で全身を覆っていた。休むことなく活動するエネルギッシュな20代の個性派俳優として映画、ドラマで活躍してきたポン・テギュだが、その姿をしばらく見ることができなかった。その間、ポン・テギュは不遇の時期を過ごした。椎間板ヘルニアにより手術を受け、出演料未払い訴訟も起こし、不慮の事故で父親を亡くした。
新作映画『ミナ文房具店』(5月16日公開)で、ポン・テギュはにぎやかな小学生に囲まれ、幸せそうな笑顔を見せる。その姿は慶州ののどかな風景、キレイな自然光とマッチしている。全身の緊張をほぐし、子どもたちと一緒に思い出の文房具ゲームを楽しみ、のんびりとリラックスした時間を過ごしたという。ポン・テギュは映画について「あまり面白くないかもしれないし、あまり笑えないかもしれないし、あまり泣けないかもしれないけれど、それがいいところ」と話した。もしかすると、それはポン・テギュ自身の話かもしれない。
ワンテンポ遅くなったポン・テギュの言葉からは、歩んできた道の影響がありありと見えた。もう33歳、ポン・テギュは分別のある大人になった。丸くなってきたが、さらにしっかりしてきた。
-『ミナ文房具店』で共演したチェ・ガンヒとは本当に昔からの友人のように見えた。それなのに、あまりよく知らなかったと?
「ご一緒したいという思いは持っていましたが、実際には同じ所属事務所でもよく知りませんでした。実は、チェ・ガンヒさんの方から歩み寄ってくれたのに、僕が予想もできずにビックリしていたら、チェ・ガンヒさんが意気消沈してしまい、僕は僕でまた気後れし…。そんな状況だったのに、映画の撮影が終わり、一緒に映画の宣伝活動をしているうちに、気が楽になりました。やっと親しくなれたと思います」
-同作では、故郷に帰ってきた小学校教師役。肩の力を抜いて、演じているような気がした。
「『ミナ文房具』ももちろん、これからもそうだと思います。肩の力を抜いて、委ねるのがこれからも重要だと思いました。演じながら、自分のことを考えるのも重要ですが、映画がどうでなければならないかが1番であり、相手はどうなのかがその次ではないでしょうか。“以前もそういう考えだったのか”と聞かれたら、はっきりとそうだったとは言えない。そういう風に向き合ったのは、この映画が初めてでした」
-以前のポン・テギュは全身によろいをまとい、「物分かりのいい分別のある大人にはならない」と叫んでいるように見えた。表舞台に出ていなかった数年間、分別のある大人になり、今はむしろ余裕が生まれたような感じというか。
「何年か前の自分のインタビューを読んだことがあります。“本当に面白いヤツ”でした。極端で裏がない。今は時がたち、客観的に見られるようになったので、はっきりと見えます。あるときは痛ましくもありました。そこまで奥歯をぎゅっとかみしめ、全身に力を込めようとしたら、しんどいに決まっている。一方では、あらゆる経験をしてきたので、今はこういう考えをするんだなと思ったりもします。それでも分からない。いつか、今の自分を振り返りながら、“変なヤツ”と思うかもしれませんね」
「その頃は、むしろ不安でした。他の人たちからすると、仕事もたくさんして、うまくいっているように見えていたので、そう思っていなかったと思いますが、自分は不安でナーバスでした。でも、戦闘力にあふれていました。余裕がなかったので、刺激されるとすぐに反応したし。今は余裕が生まれ、淡々としてきました。そこまでする必要があるのか、と思っているということです」
-周りの反応はどうなのか。
「母は心配していました。『息子がたばこをやめるなんて!』と(笑)。母は『なぜ山に登るのか』『この子は大丈夫か』と今でも心配しています。ある日「おいしいものでも食べてきなさい」と10万ウォン(約9200円)をもらいました。母がどんな気持ちでそうしたか。『違うって。僕は大丈夫だよ』と言っても、まだ心配しています。姉たちは喜んでいますね。僕も今のこういう自分が気に入っています」
-バラエティー番組『化身』の司会にも電撃抜てきされた。ゲストで一度出演したのが好評で、すぐに司会になったのか?
「言葉通り、電撃抜てきでした。連絡がきたのは、初収録の5日前。マネジャーを通じて『バラエティーをやってみる気はないか』と、『化身』の司会について連絡を受けて、1秒『え?』と思ったけれど、『面白そう』と思って、すぐにやると言いました。自分でも『なぜ僕が?』と聞きました。プロデューサーは、収録したものを見て気に入り、司会に適していると思ったそうです。僕はまだ分からない。でも面白い。キム・グラ、シン・ドンヨプ先輩もためになる話をたくさんしてくれました」
-ゲスト出演したときの放送を見ると、他の人の話をとてもよく聞いて、核心を整理する能力があった。
「寂しいからだと思います。人に飢えていて(笑)。僕はもともと、多くの人と交流するタイプではないです。でも、番組で他の人が打ち明ける話を聞いて、自分の話をするのが、なぜか心地よかった。毎週同じ仕事をする規則的なパターンも新鮮。自分でも意図せず、新しく面白いことに挑戦することになりましたが、簡単でないことは分かっています。うまくいけばいいですね(笑)」
キム・ヒョンロク記者
STARNEWS/朝鮮日報日本語版
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