KBSは先月18日、タイトル表記がハングル正書法に合っていないとして物議を醸していたドラマ『世界のどこにもいない優しい男』(以下『優しい男』)をめぐり、意図的に誤ったつづりを用いていた「優しい男(韓国語表記:チャカン・ナムジャ)」の部分を、最終的に語法に合ったつづりに変更することを決めた。今回の騒動は、公営放送までもが韓国語の正書法を無視するという発想をしたという点で多くの課題を投げ掛けた。1日..
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▲タイトル表記がハングル正書法に基づいていないとして「国語破壊」の論争を招いたKBSのドラマ『世界のどこにもいない優しい男』は、最終的にタイトル表記が正しいつづりに変更された。写真は今月5日、同ドラマと出演陣と制作陣が、COEXインターコンチネンタル・ソウル(ソウル市江南区)で制作発表会を行ったときの様子。/写真=キム・ギョンミン記者
KBSは先月18日、タイトル表記がハングル正書法に合っていないとして物議を醸していたドラマ『世界のどこにもいない優しい男』(以下『優しい男』)をめぐり、意図的に誤ったつづりを用いていた「優しい男(韓国語表記:チャカン・ナムジャ)」の部分を、最終的に語法に合ったつづりに変更することを決めた。今回の騒動は、公営放送までもが韓国語の正書法を無視するという発想をしたという点で多くの課題を投げ掛けた。1日に数千件単位で掲載されるインターネット記事は、読者の目を引くために刺激的な言葉を組み合わせている。また、個人同士では、短い携帯電話メールに多くの内容を込めるために言葉を短縮することが日常化している。今回の出来事はそのような事態を反映しているのではないだろうか。
インターネットでさまざまな形に短縮・変形された言葉は、私たちの日常生活に深く入り込んでいる。就職活動生たちのあるインターネットカフェの名前(就職ポゲギ)に由来する「ポゲギ(完全征服、粉砕などの意の新語)」という単語は昨年、ある市民団体の主張を表す「FTA毒素条項ポゲギ」に引用され、今年4月の総選挙に出馬したソン・スジョ候補(釜山・沙上選挙区)は「3000万ウォン(約210万円)で選挙ポゲギ」というスローガンを掲げて関心を集めた。しかし辞書にもなく、方言でもないこの単語の意味を正確に理解している人はそれほど多くなかった。
携帯電話メールやインターネットの書き込みなどで、虚脱した心理状態を表現する「ホル」という単語は、映画『ウンギョ』で、これを知る世代と知らない世代を分ける象徴として使用された。最近は幼い子どもたちまでこの言葉を使うが、中高年層では意味を知らない人も多かった。主婦のソ・ユンジュさん(38)は「インターネットを知らない6歳の子どもが「ホル」という言葉を幼稚園で聞いてきて使っているので驚いた」と話した。俗語という感覚が強い「ティッタマ(陰口)」に由来する「ティッタムファ(「後ろ+談話」という意味)」は、登場から10年以上を経て「陰口」「悪口」といった意味で定着した。しかしもともと俗語だったという印象が強いため、新聞や放送でこの言葉が用いられることに違和感を覚える人も依然として多い。アルバイトを短縮した「アルバ」の場合は、すでに短縮語が元の単語に置き換わったといえるだろう。
これらの新語は広範囲、かつ多様に使われているが、標準国語辞典に掲載されている単語はまだない。国立国語院のキム・セジュン公共言語支援団長は「新造語は新しい現象の反映であり、同時に経済性を追求するため、最近のようなスピード時代には、短縮語も多く登場している。言葉は社会的な約束であり、社会の構成員全体が受け入れなければならないが、受け入れ難い、あるいは拒絶感を感じる人がいる単語を、ただ面白いとか新しいといって頻繁に使うようになれば、言語生活の混乱を招く可能性がある」と話した。
「テンジャンニョ(自分に経済力がないのに、男性や親に頼って高価なものを欲しがる女性)」「クルホボクチ(張りがあり健康的な太もも)」など、むやみに作られた新造語のせいで、性差別、人種差別などの認識が強調されたり、道徳的な警戒心を解いてしまったりする可能性があるという懸念も提起されている。最近はテレビのバラエティー番組に登場する出演者たちまで「ヤドン(成人向け動画、ヤハン・ドンファの短縮語)」という言葉を簡単に口にするようになり、「ポルノ」というもともとの意味が持つ暴力性や社会病理性をぼやけさせてしまった。これはポルノに接したり、見たりする人たちの認識にも影響を及ぼしたという。
ツイッターやフェイスブックなど、ITの発達により、流通する言葉の量は増えたが、それだけ私たちの言語生活が多様になったかどうかについては、疑問を呈する人も多い。特に2、3年前から頻繁に使われるようになった非文法的な表現「完全おいしい」「完全速い」などの場合、むしろ言語生活の「貧困さ」を立証しているという指摘が出ている。『乱暴な新造語と文化現象』(2006)を執筆した秋渓芸術大学文芸創作学科のキム・ダウン教授は「若者たちの間で動詞や形容詞を強調するために、誰もが『完全』という名詞を使用する傾向にあるが、このような傾向が続けば、今後国語の語彙(ごい)は非常に貧困なものとなるだろう。正確な表現のための的確な単語を探す努力をする過程で、一個人と社会の語彙が豊富になっていく」と指摘した。
シン・ドンフン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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