10月20日より28日まで開催された第25回東京国際映画祭コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した『未熟な犯罪者』(カン・イグァン監督)。そして「犯罪少年」を繊細に演じた主演俳優のソ・ヨンジュが最優秀男優賞を受賞した。社会弱者で犯罪を犯してしまう若者とその母親の葛藤を描いた本作のカン監督、主演女優のイ・ジョンヒョンに話を聞いた。
―主演の二人を起用することになった決め手を教えてください。
カン..
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10月20日より28日まで開催された第25回東京国際映画祭コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した『未熟な犯罪者』(カン・イグァン監督)。そして「犯罪少年」を繊細に演じた主演俳優のソ・ヨンジュが最優秀男優賞を受賞した。社会弱者で犯罪を犯してしまう若者とその母親の葛藤を描いた本作のカン監督、主演女優のイ・ジョンヒョンに話を聞いた。
―主演の二人を起用することになった決め手を教えてください。
カン監督「母ヒョスン役を誰にしようか考えていたとき、2つのポイントがありました。一つは、見た目には子どもがいないように見えるけれど、未婚の母の印象が出せる、30代半ば位の人。作品がドラマチックなので、感情などの内面演技で深みが出せる人。そんな中、イ・ジョンヒョンさんが出演したパク・チャノク監督の『波乱万丈』という短編を見て、これがその年に見た長編・短編映画の中で最高で、この役にピッタリだと思い、プロポーズしたところ、彼女もシナリオを気に入ってくれて出演を快諾してくれました。もともと、1996年に当時15歳だったイ・ジョンヒョンさんが出演した『つぼみ(原題:花びら)』を見たことがあり立派な女優だと思っていました。
また、ジグは中学2年生くらいの役でしたが、中学生の子役は意外に少なく、中学校を訪ねたり、公開オーディションを行ったりしてようやく出会えたのがソ・ヨンジュ君でした。会ってみたら本当にまなざしが深いものがあって、なにか事情を抱えているような深みを持っているのもよかったし、話をしてみても最近の子はませてますが、彼は本当に子どもらしいところがあり、純粋さを感じられたので決めました」
―16歳にもなる息子がいる母親役ですが、脚本のどんな点に引かれましたか。
イ・ジョンヒョン「出演オファーを受けた時は、衝撃を受けました(笑)。私は韓国では若く見えることで有名なんですが、母親役と聞いて『どうしてわたしが?』と聞きました。すると監督が若くして未婚の母になった人は、見た目は母に見えない人が大部分であって、子供との関係も友達のようで、そのような人を求めている、と言われました。そしてシナリオを見たら本当に素晴らしくて。わたしは監督の『謝罪』という作品が大好きなのですが、今回のシナリオもリアリティーを持ちつつ、ナチュラルで穏やかな気持ちで見られるけれども、途中途中に爆発する気持ちが見えるところがとてもいいと思いました」
―役作りに苦労したことはありますか。
イ・ジョンヒョン「ヒョスンは、彼女自身も『犯罪少年』(注:韓国では青少年犯罪者を男女共に『犯罪少年』という)出身。本当に困難な人生を生きてきて、人生の果てを見たような経験の持ち主ですが、13年ぶりにわが子に会って新しい人生をスタートさせるという背景があるので、私も希望を持って生きるところを演じようと努力しました。劇中、何かにつけてお願いするシーンが多かったのですが、堅苦しい表情で泣き言を言うようにお願いするのではなくて、笑顔でお願いしたほうがいいのではないか、ヒョスンはそうするだろう、と思って演じました。13年ぶりにわが子に会うのは彼女にとって大きな心構えが必要だったと思いますので、だからこそ笑顔がいた方がいいのではないか、と思いました。笑顔によって、現実から脱皮できる、という気持ちが彼女にはあったと思います」
―印象的なシーンがたくさんありましたが、好きなシーンや思い出のシーン、見てほしいシーンはありますか。
イ・ジョンヒョン「漢江のところで、今まで生きてきた人生を息子に話すシーンがあります。とても悲しいシーンですが、ぜひしっかり見てほしいシーンです」
カン監督「今言われた、漢江のほとりを歩くシーンはわたしも好きなシーンです。ほかには、母と息子が一緒に安宿に行くシーンがありますが、そこで初めて二人が向き合って、息子が母親にもたれかかるシーンがあります。最初は母に抱かれ、いい思いを抱いていたけれど、また複雑な考えを持つ…というくだりです。そこも気に入っています」
―イ・ジョンヒョンさんは、しばらく映画からは遠ざかっていたようですが。
イ・ジョンヒョン「なかなかよい作品にめぐり合えなかったので映画の方は出演をしてこなかったのですが、ドラマは時々出ていました。これからも演技と歌手としてのアルバムの活動も並行してやっていきたいと思っています。次はキム・ハンミン監督(『神弓KAMIYUMI』)の作品に出る予定です」
―撮影前と後で、主演の二人の印象は変わりましたか。
カン監督「俳優と仕事をするということは、お互いを知る過程だと思います。イ・ジョンヒョンさんとは今回いろいろな話をしたので、次に何かの仕事をするときには、より人間的深みのある作品を一緒に撮れる気がします。今回の作業で、その信頼の土台が出来たと思います。ソ・ヨンジュ君とは、最初は息がなかなか合いませんでした。しかし話をしながら、半ばから後半にかけて『演技がうまい』と思えるようになりました。短期間で本当によくなっていったと思います。自分との信頼関係が築けた、本当に気分のよい作業になりました」
―ヒョスンのような人たちは、若いときの失敗をどのようにすれば乗り越えられると思いますか。
イ・ジョンヒョン「ヒョスンやジグのような人物は実際に社会の中に多いと思います。そのような人たちに社会の制度や関心も必要だと思います。生活に困っている人に対する福祉の面での優遇や、教育の機会ももっとたくさん与えてあげられたら、ヒョスンやジグのような境遇の人も減ってくると思います」
―この作品を通じて伝えたいことは。
イ・ジョンヒョン「犯罪を犯した少年と未婚の母を描いた作品ですが、わたしとしてはあくまでも母親と息子の物語として見てくれたらうれしいと思います。わたしたちの目の前にこのような二人が現れたら、果たして社会は二人をどのように受け入れるのだろうか、ということを考える時間になってくれればと思います」
―韓流K-POPの先駆者といえるイ・ジョンヒョンさんですが、今のK-POPの状況をどう思いますか。
イ・ジョンヒョン「K-POPの後輩たちが、ヨーロッパやアメリカなどでもヒットしていることに拍手を送りたいと思います。ただ残念に思うことは、音楽性や歌唱力、ステージのパフォーマンスというのは高まっていると思いますが、本当に流行とか求められているものの変化が早い。なので長く人々の心に残るヒット曲が生まれないのが残念に思います」
―ご自身の今後の方向性も教えてください。
イ・ジョンヒョン「いい俳優というのは、どんな役でも、監督あるいはシナリオに対して信頼する気持ちがあれば、身を投じてその役になりきる姿勢が大事だと思います。わたしは今回未婚の母の役でしたが、女優はこのような役を避ける傾向もありますが、監督に対してもシナリオに対しても信頼を寄せているので今回は出演をしました。歌手の活動は、わたしは元々強い個性を見せる歌手でしたので、俳優としての活動とは違い、やりたいこと、やりたいジャンルをどんどんやって、好きな活動をやっていきたいと思います」
―カン監督にとっていい映画とは。
カン監督「同じ時代を生きている人が共感できる映画。そう言うと、商業的なところが目的にとらえられるかもしれませんが、そうではなく大衆性があるということは皆さんが共感できる作品だと思うので、大衆的な映画というのが良い映画なのかな、と思います。あと、一歩一歩着実にみんなが思っている思いを表現する映画というのがいいと思います。人々の心の中をきちんと反映させて、一歩ずつ歩んでいってちゃんと足跡を残せるのが映画だと思います」
野崎友子通信員
朝鮮日報日本語版
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