KBS第2テレビの週末ドラマ『棚ぼたのあなた』が先月9日に最終回を迎え、男性主人公の妹が中小企業会長の息子と挙式するというラストシーンで幕を閉じた。劇中で新婦は平凡なレストランの店員として登場する。新郎も金持ちの息子ではあるが、ぜいたくや見栄を知らない堅実な青年だった。だがこうした設定とは異なり、ドラマを見ていたほとんどの中産層や庶民の目には、2人の挙式はあまりに豪華だった。
結婚式の場面で新婦..
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▲超高級ホテル、ブランド物のドレス、華やかなフラワーアレンジメント…。ドラマに登場する結婚式は、ほとんどが似たようなパターンだ。写真は左から、MBCの帯ドラマ『人魚姫』(2003年)、SBSの水木ドラマ『銭の戦争』(07年)、KBSの週末ドラマ『棚ぼたのあなた』(12年)に登場した結婚式のシーン。/写真=各テレビ局提供・画面キャプチャ
KBS第2テレビの週末ドラマ『棚ぼたのあなた』が先月9日に最終回を迎え、男性主人公の妹が中小企業会長の息子と挙式するというラストシーンで幕を閉じた。劇中で新婦は平凡なレストランの店員として登場する。新郎も金持ちの息子ではあるが、ぜいたくや見栄を知らない堅実な青年だった。だがこうした設定とは異なり、ドラマを見ていたほとんどの中産層や庶民の目には、2人の挙式はあまりに豪華だった。
結婚式の場面で新婦は、1着4000万―1億ウォン(約280万―約710万円)もするスペインの有名ブランドのウエディングドレスに身を包み、クリスタルで飾ったブーケを手に登場した。式場は、会場使用料が1日当たり5000万ウォン(約350万円=招待客500人の場合)前後というソウル・江南地区の高級結婚式場だった。式場は新郎新婦の友人たちではなく、親の知人たちでいっぱいだった。これまで社会問題となってきた「高額の結婚式」の典型といえる結婚式シーンだった。
ドラマの内容は、まるで2人が地味な結婚式を挙げるかのように展開していたが、この挙式シーンが放映されるや、インターネットでは「美しい姿」「華やかなブーケにくぎ付け」といった記事があふれた。ネットユーザーからは「私もあんなドレスを着てみたい」「宝石をあしらったブーケは高そうだけど、きれい…。結婚記念品として義父母からプレゼントしてもらえないかしら」などのコメントが相次いだ。
このドラマだけではない。取材チームが2000年以降に地上波テレビ局3社で放映されたドラマ(時代劇は除く)のうち、高視聴率を挙げた人気ドラマの挙式シーンを分析したところ、48編のうち24編、つまり半数のドラマで絵に描いたような結婚式が登場した(AGBニールセン・メディアリサーチ、TNmS調べ)。主人公が有名ブランドのドレスに身を包み、ソウル市内の超高級ホテルで挙式するシーンも、多くのドラマに登場した。
平凡な豚足料理店の大家族の生きざまを描いたKBS第2のドラマ『嫁全盛時代』(2007年)では、3人の花嫁がいずれも結婚式でブランド物のドレスを身に着けた。
11日に本紙編集局に集まった専門家たちは「外国の映画やドラマには、個性あふれる感動的な結婚式が多数登場するが、韓国ドラマは同じパターンの典型的な結婚式ばかりで、豪華な挙式の風潮をあおっている」と指摘した。
ソウル大学の郭錦珠(クァク・クムジュ)教授(心理学)は「豪華な結婚式が登場するドラマに慣れてしまうと、ある瞬間からそれが自分の人生の基準となる」と話した。
結婚情報会社ソンウのイ・ソンミ・カップルマネージャーは「現実のカップルの中にも、ドラマのような結婚式を夢見る人たちは多い。テレビは結婚の現実をありのままに見せることもなければ、小さな結婚式に美しくスポットを当てることもない」と指摘した。
一部のドラマの主人公のように、ソウル市内の超高級ホテルで挙式する場合、会場代は招待客500人基準で8000万ウォン―1億ウォン(約560万―約710万円)は掛かる。だが、ドラマではそのような巨額の費用が必要だという事実も、その金を集める過程も描かれない。視聴者たちは本人も気付かないうちに「ああいうのが素敵な結婚式」と考えるようになり、自身の置かれている現実にやりきれないものを感じることになる。
問題は、こうした現象が徐々にエスカレートしているということだ。ソウル女子大のキム・スンス教授(前MBCドラマ局長)は「どのテレビ局も視聴率を上げるために、三角関係はおろか四角関係、五角関係にまで発展させ、競うように激しい内容のドラマを制作している」と指摘する。結婚式のシーンは、そのようにして増幅した摩擦や対立を解消するクライマックスとなるため、視聴者の関心が集中するわけだが、まさにそのクライマックスで豪華結婚式が登場する。
キム教授は「視聴者はドラマの結婚式を見ているうちに、どんどん目が肥えてくる。テレビ局はそのような視聴者のレベルに合わせようと、次のドラマではさらに豪華な結婚式シーンを登場させる」と指摘した。
ソウル大学の姜正遠(カン・ジョンウォン)教授(民俗学)は「ドラマが終わっても、ドラマの豪華結婚式が残した幻想は、視聴者の頭の中にそのまま残ってしまう」と語った。そのような幻想を再び増幅させるのが、芸能情報番組やインターネットメディアだ。芸能人の大半は、ドラマの中だけでなく現実でも、多数のスポンサーを集めて豪華結婚式を挙げる。そして多くの芸能情報番組が、スターの結婚式を、批判することなく全国民に見せているのだ。
崔鍾錫(チェ・ジョンソク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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