ちょうど10年前の2012年、歌手PSY(サイ)の曲『江南スタイル』が世界的にヒットしながらも米ビルボードシングルチャートで2位にとどまった時、「これがK-POPの限界」と言われた。世界で最も人気のある歌を意味する「ビルボードシングル1位」は韓国人歌手には無理だと思われた。 ところが、そうした悲観論を一掃し、一気に自信と楽観論に変えたのが男性アイドルグループBTS(防弾少年団)だ。「ビルボードの先輩」PSYは先日の懇談会で、「BTSや(女性アイドルグループ)BLACKPINK(ブラックピンク)など、現在北米で有名な後輩たちは私とは正反対のケースで、(曲ではなく)人物が人気になった。持続性・連続性が長く、本当によく売れていると思う」と言ったのもこのためだ。歌った曲ではなく、アーティストが人気を得る時、生命力も長いというポピュラー音楽界の属性を見抜いた発言だ。 興味深いのは2013年の結成当時、BTSはK-POP界の中心というよりは端っこに近かったグループだという点だ。当時「3大芸能プロダクション」と呼ばれたSM・JYP・YGエンターテインメント所属ではなく、作曲家兼プロデューサーのパン・シヒョクの事務所Big Hit Entertainment(ビッグヒット・エンターテインメント)=現HYBE(ハイブ)=所属だった。このため、BTSは「土のスプーン(経済的に恵まれていない)アイドル」とも呼ばれた。音楽的にも初期はヒップホップ的要素が顕著だった。『K-POPの時代』を出版した韓国ジョージ・メイソン大学のイ・ギュタク教授は「デビュー初期のBTSは強烈なビートや激しいパフォーマンスなど、ストリート・ヒップホップ的な要素が強かったが、世界のステージに進出する際はポップスやリズム・アンドブルース(R&B)など多様な流れを受け入れる柔軟性と変化を見せた」と評した。

 BTSの輝かしい成果は、米国最高の人気曲やアルバムを発表するビルボードチャートの記録でも証明されている。米市場で最初にヒットしたのはシングルではなくアルバムだった。 2018年に3rdフルアルバム『Love Yourself 轉 ‘Tear’(ラブユアセルフ てん ‘ティアー’)』がアルバムチャート「ビルボード200」で初めて1位になった。アイドルグループの特性上、レコード売上枚数などを基に集計する「ビルボード200」で強みを見せるのはある意味、自然なことだった。残る課題は「ビルボードシングルチャート」の1位だった。 新型コロナウイルスの流行が始まった2020年、ついにBTSは『Dynamite(ダイナマイト)』で最後に残っていたビルボードシングル1位を取った。新型コロナの世界的流行による憂うつな気分をスッキリ洗い流してくれるエキサイティングなディスコ風ナンバーで、初の英語歌詞による歌で世界のトップに立ったのだ。その直後の2カ月後、彼らは『Life Goes On(ライフ・ゴーズ・オン)』で韓国語歌詞の歌でもビルボード1位を獲得した。 「誰もがつらく、疲れている時、心を癒し、休ませ、克服できる勇気をくれることこそ、芸術の癒しの力だ。そういう意味でBTSもまた別の成長を見せた」(イ・ギュタク教授)という評もあった。ビルボードシングルチャート1位を6回、アルバムチャート1位は5回。BTSはビルボードチャートの二大主軸であるこの2部門を席巻した最初の韓国人歌手だ。これまで韓国国内でのディスク累計売上枚数だけで3278万枚。正確な統計はないが、世界では7250万枚に達するという推計もある。 そしてBTSは米ポピュラー音楽界の3大授賞式と呼ばれているビルボード・ミュージック・アワード、アメリカン・ミュージック・アワード、グラミー賞の授賞式にも挑んだ。2017年のビルボード・ミュージック・アワードで「トップ・ソーシャル・アーティスト賞」を受賞したのを皮切りに、2021年に4冠、今年も3冠と、6年連続で受賞という記録を作った。アメリカン・ミュージック・アワードでも2018年に「フェイバリット・ソーシャル・アーティスト賞」受賞を皮切りに、2019年に3冠、2020年に2冠、2021年に3冠と4年連続で受賞している。 最後に残ったグラミー賞は、まだBTSが受賞できていない唯一の賞となっている。彼らは2019年にプレゼンターとして出席したのをきっかけに、2021年と2022年に2年連続で「トップポップデュオ/グループパフォーマンス」部門にノミネートされたが、受賞はならなかった。BTSは2018年、2020年、昨年の3回、国連で演説し、先日はジョー・バイデン米大統領の招待でホワイトハウスを訪問した。K-POPを越えて韓流の象徴となったのだ。今年の活動一時休止宣言でBTSは新たな岐路に立つことになった。

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