「息子よ、どうしてそんなに苦労して仕事をするの?」

 「防弾少年団(BTS)のチケット! 一番好きだから!」

 ダウン症を患う14歳の米国人少年ハリソン・キャンシラ君は、母親の問いにこう答えた。一番好きなメンバーにはJ-HOPEを挙げた。J-HOPEのダンスが好きだという。そして再びほうきを持って、近所の家の庭の落ち葉を片付け始めた。
◆【写真】米国公演のため出国する防弾少年団

 防弾少年団が米国でコンサートを開催するというニュースを知ってから、ハリソン・キャンシラ君は清掃のアルバイトを始めた。コンサートのチケットを購入するためだ。防弾少年団に会うという夢をかなえるため、真っ先に解決しなければならないミッションだ。

ソーファイ・スタジアムのツイッターより

 カリフォルニア州イングルウッドにあるソーファイ・スタジアムで開催される今回のコンサートは、実はあっという間にチケットが完売となった。世界的なスターとなった防弾少年団が、新型コロナウイルス感染症拡大後に初めて行う対面公演だけに、チケットを手に入れるのは容易ではなかった。

 チケットにはすでに驚くほどの「プレミア」が付いており、その価格は想像を超える。チケット販売会社のチケットマスターによると、27日の初日公演A1エリアのチケットは7300ドル(約83万8800円)に達し、ステージから最も遠い座席も350ドル(約4万200円)ほどで、決して安くはない。定価が75-275ドル(約8600-3万1600円)であることから、少なくとも25倍以上の売り出し価格となっているというわけだ。

 事実上、絶望的な状況に置かれたハリソン・キャンシラ君の母親は18日、オンライン寄付サイト「GoFundMe」に息子の話を投稿。防弾少年団のヒット曲「Butter」のジャケット写真がプリントされたTシャツを着て、歌に合わせてダンスを踊る姿、防弾少年団の話に明るいほほ笑みを浮かべた表情、近所の塀のところに捨てられたごみを拾って日当をもらうシーンなどが収められた動画が公開された。

 そうして1週間もたたないある日、ハリソン・キャンシラ君に奇跡のような出来事が訪れた。ソーファイ・スタジアムがオープンして以来100万番目のチケット販売を記念するスペシャルゲストに選定され、防弾少年団のコンサートの無料入場券を受け取ったのだ。ハリソン・キャンシラ君の事情を知ったソーファイ・スタジアムの経営陣が別途VIPチケットを用意し、企画したサプライズ・プレゼントだった。

ムン・ジヨン記者

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