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Kドラマ人気 秘訣は万国共通のテーマと「韓国的なもの」の調和
【ソウル聯合ニュース】韓国ドラマが世界の視聴者を魅了している。米動画配信大手ネットフリックスで配信中の「イカゲーム」を筆頭とする世界的なK(韓国)ドラマブームは「シンドローム」といっても過言ではない。
コンテンツ業界が「イカゲーム」の成功に続こうと力を尽くすなか、韓国ドラマの人気の秘訣(ひけつ)を巡ってはさまざまな分析が出ている。
専門家らは、万国共通の社会問題に韓国固有の文化や情緒を巧みに組み合わせていることに注目する。貧富の格差や不平等、人間性といった素材を、世界の人々には異国的に映る仕掛けで描いているとの評価だ。想像の中のヒーローではなく平凡な人々を主人公に据え、リアリティーを高めていることも人気の一因になっている。
◇世界でヒットする韓国ドラマ
韓国ドラマブームの先頭を走るのは、言うまでもなくネットフリックスのメガヒット作「イカゲーム」だ。借金を抱えた主人公たちが巨額の賞金を獲得するため命がけのゲームに挑むストーリーで、世界での視聴数は1億世帯以上と、ネットフリックスのオリジナルシリーズとして過去最多を記録。同社がサービスを展開している83カ国・地域で視聴ランキング1位を獲得した。
作品に登場する少女型ロボットを模したグッズや主人公らがゲームで着た緑色のジャージは飛ぶように売れ、ゲームの題材となったカルメ焼き作りなども流行している。主演のイ・ジョンジェ、パク・ヘス、チョン・ホヨンらは米国の人気トーク番組に出演し、グローバルヒットを実感させた。
韓国ドラマが動画配信コンテンツの世界ランキングで上位を占めるのは今や珍しくなくなった。順位集計サイトのフリックスパトロールによると、「イカゲーム」が1カ月以上にわたりネットフリックスのテレビ番組で世界1位を守っている一方、今月配信が始まった「マイネーム:偽りと復讐」やラブコメディーの「海街チャチャチャ」も10位以内に入っている。
また、時代劇とゾンビという組み合わせが斬新な「キングダム」、残忍な怪物に姿を変えた人間たちが暴走するさまを描く「Sweet Home ―俺と世界の絶望―」、さらにヒョンビン、ソン・イェジン主演の「愛の不時着」、ソン・ジュンギ主演の「ヴィンチェンツォ」、パク・ソジュン主演の「梨泰院クラス」も世界の視聴者を引き付けた。
◇格差や不平等…世界的なテーマと「韓国的なもの」の調和
専門家らは韓国ドラマの成功の秘訣として、富の集中や非人間的な競争といった問題を暴き出し、現代社会の病弊に鋭く切り込んでいる点を挙げる。
「イカゲーム」は借金に苦しめられる人生を、「キングダム」は飢えにあえぐ民衆と特権階級の対比を、「Sweet Home ―俺と世界の絶望―」は平凡な人々が欲にむしばまれて怪物に変わる姿をそれぞれ前面に出している。こういった韓国ドラマの内容やメッセージは世界のあちこちの現実を的確に反映していると、専門家らは評価する。いずれもありふれた現実ながら、見逃してしまったり、無関心になったりしがちな問題だ。
ソウル大の洪錫敬(ホン・ソクギョン)教授(言論情報学科)は「韓国は今や普遍的なメッセージを伝えられる国になった。植民統治、飢餓、戦争、民主化などを経て先進国の仲間入りをする100メートル走の走者だ」とたとえて見せた。また、「ドラマに描かれる貧富の差は自分たちが生々しく経験している苦痛だが、先に経験した先進国はもはや鈍感になっており、開発途上国は批判する余力がない」と説明した。
◇描くのはスーパーヒーローではなく「私たち」
平凡な主人公が問題を解決するため周りの人と団結し、大きな力を発揮するという韓国ドラマのストーリーも、世界の人々を魅了する要因に挙げられる。
「イカゲーム」のイ・ジョンジェは、最後の1人になるまで競い合う殺伐としたゲームの中でも周囲の人に手を差し伸べる。「キングダム」の主人公のチュ・ジフンは力のない世子(皇太子)から人々を結集させ民を思う君主に成長し、利己的なところがあった「海街チャチャチャ」のヒロイン、シン・ミナは海辺の町で住民たちと過ごしながら変わっていく。
こうした韓国的なストーリーの最も重要なモチーフは共同体だ。スーパーヒーローではなく、「私たち」を主体に物語を組む。
大衆文化評論家のキム・ソンス氏は、欧米の作品では問題の解決に超能力を用いるなどしているのに対し、韓国のドラマでは平凡な人々がそれぞれの場所で自分の役割を果たすときに驚くべきシナジー効果を発揮すると説明。「韓国ドラマが提示する解決策を見て、西洋の人は『どうして忘れていたのだろう』と衝撃を受け、東洋の人は『自分たちの価値は正しいのだな』とほっとする。西洋と東洋の間の橋渡し役をしている格好だ」と分析してみせた。
◇「イカゲーム」ヒットが他作品にも波及 専門家「可能性は無限」
韓国ドラマの相次ぐ成功には、一つの作品のヒットが他の作品にも波及する連鎖効果も作用したようだ。「イカゲーム」を視聴した人に他の韓国作品を紹介するアルゴリズム推薦が影響を与えているとみられる。
10話前後で「一気見」しやすい分量であることも韓国ドラマの長所だ。1シーズンが20話以上の海外の大作に比べ、気軽に視聴できる。短いだけに無駄を省いたテンポのいい展開も、最近のコンテンツ消費者の好みに合っている。
キム・ソンス氏は、韓国的なストーリーの特性を維持しながら新たな素材に挑み続ければ韓国ドラマの可能性は無限だとする一方、ヒット作の二番煎じでは発展は見込めないと忠告している。