「私は彼のにおいをかぎません。私は犬じゃないから(I did not smell him. I’m not a dog)」

 韓国人では初めて米アカデミー助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン(73)。26日(韓国時間)の授賞式が終わった後も「ユン・ヨジョン語録」は続いた。ユン・ヨジョンは同日、授賞式に続いて行われた米現地メディアとのバックステージ・インタビューや、在ロサンゼルス韓国総領事館の韓国特派員団懇談会まで、休む間もなく強行スケジュールをこなした。遠回しに言わず、鋭い一言で応じるユン・ヨジョンならではの語り口は、アカデミー賞授賞式やハリウッドでも相変わらずだった。

 授賞式直後のインタビューでは、外信記者らから突発的な質問が出た。「(助演女優賞のプレゼンターを務めた人気俳優)ブラッド・ピット(57)からどんなにおいがしましたか?」という問いだった。やや意地悪で無礼に聞こえそうな質問だったが、ユン・ヨジョンはすぐに、「私は犬ではありません」と答えて応酬した。さらに、「ブラッド・ピットと映画を撮影する計画があるか」と問われた時も、ユン・ヨジョンは「私の英語と年齢を考えれば、そういうことは決して起こらないでしょう。私は夢を見ません(I do not dream)」と答えた。ブラッド・ピットは、ユン・ヨジョンが助演女優賞を受賞した映画『ミナリ』を製作した映画会社プランBの創設者だ。

 ユン・ヨジョンは最近のアジア映画躍進やハリウッドの多様性拡大を虹に例え、「虹にも7つの色があります。男性と女性に区分し、白人と黒人、黄色人種に分けたり、同性愛者とそうでない人を分けたりしたくありません」「虹のようにすべての色を合わせて、もっときれいにしなければなりません」と語った。

 授賞式直後、在ロサンゼルス韓国総領事館では、韓国特派員団との懇談会が開かれた。ユン・ヨジョンはこの会で、白ワインを飲みながら余裕のある様子で質問に答えた。取材陣がいつもの懇談会のように手を上げて順番に質問すると、ユン・ヨジョンは「手を上げることはありません。私は大統領じゃないのだから、手を上げなくてもいいです。何でもいいから早く言ってください」と気さくなところを見せた。

 半世紀以上にわたる俳優人生の原動力について、ユン・ヨジョンは「劣等感」と答えた。そして、「本当に食べるため、生きていくため、私にとって台本は聖書でした」とも言った。アカデミー賞受賞直前の精神的なプレッシャーについても、「生まれて初めてのストレスでした」と告白した。2002年韓日共催ワールドカップサッカーの韓国代表チームや、フィギュアスケート韓国代表キム・ヨナ選手の気持ちも理解できるくらいだったという。ユン・ヨジョンは「ノミネートされただけでも光栄だと思っていたのに、声援がすごかったので大変でした」「とてもつらくて、目が充血して真っ赤になりました」と語った。作品選択の基準について問われた時も「ユン・ヨジョン語録」は続いた。「見る目とかいうものはあまり重要ではありません。見る目を信じるというのは、計算があるということで、(私は)台本を渡してくれる子どもの真心を信じました」。

 アカデミー賞の演技賞は過去100年間、韓国人俳優たちが夢にだに見ることのできなかった部門だ。だが、ユン・ヨジョンは「アカデミー賞を取ったからといって、ユン・ヨジョンが『キム・ヨジョン』になるわけではないでしょう」と率直に語った。「アカデミー賞は人生最高の瞬間ではないか」という質問にも、ユン・ヨジョンははっきりと一線を画した。「最高の瞬間というのはないでしょう。そういう言葉も嫌いです。最高とか1位とかいうことは言わないで、私たちみんな一緒に『最中』だけして、同等に生きては駄目でしょうか。アカデミー賞がすべてではないのではありませんか」。

 その代わり、「一生涯俳優」に対する意欲はありのままに見せた。ユン・ヨジョンは「年を取ってセリフを覚えるのがとてもつらいです。他人に迷惑をかけるのは嫌だから、迷惑にならない時までこの仕事をして、死ねたら本当にいいと思います」と話した。最近「ユンミョドゥルダ(ユン・ヨジョンに染み入るという意味)という新語まで流行するほど、韓国の若い世代は率直で気さくなユン・ヨジョンに夢中だ。アカデミー賞授賞式後に見せたその姿を見ると、全世界に「ユンミョドゥルダ」現象が広がっていきそうだ。

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