米国アカデミー賞に「最高の受賞所感賞」部門があったなら、女優ユン・ヨジョンは助演女優賞に加えて2冠王の主役になっていただろう。ユーモアと才知あふれるユン・ヨジョンの所感に、ソーシャルメディアは「愉快だ」「優雅だ」「コメディークラブかと思った」「名場面」といった修飾語であふれた。8度もノミネートされた「伝説」グレン・クローズなど他の俳優を持ち上げつつ、共に撮影した同僚らの労苦を高く買い、このところ社会問題に浮上したアジア系に対するヘイトや人種差別について、直接的な抗議はなくとも「私の名前はユン・ヨジョン」とアイデンティティーを打ち立て、「ワーキングマザー」としての堂々とした姿までアピールするユン・ヨジョンの弁舌を前に、ファンだと自認する人は列をなした。この日、同じく助演女優賞にノミネートされたアマンダ・サイフリッドの反応も、ユン・ヨジョンの人気に火を付けた。ユン・ヨジョンが「候補5人はみんな勝者。私はちょっと運がよかっただけ」と語ると、感激したように「I love her(すごく好き)」と言う姿がカメラに捉えられた。

写真提供=HOOKエンターテインメント

 海外メディアも、「韓国人初のアカデミー受賞」はユン・ヨジョンが収めた「人間の勝利」だと伝えた。AFP通信は「邪悪な跡取り女から老いゆく娼婦に至るまで、(社会に)順応しないキャラクターを数十年にわたって演じ、職業と人生、双方において保守的な韓国社会の規範に挑戦してきた」とつづり、さらに「この日の受賞の栄誉は、ユン・ヨジョンが韓国において優れた監督らと共に仕事をする中で積み上げたキャリアの頂点でもある」と伝えた。韓国映画界の成し遂げた成果でもある、という説明だ。英国の日刊紙「ガーディアン」は「今夜の勝利者、なんてチャンピオンだ(What a champion)」と報じた。

 米国の有名作家ロクサーヌ・ゲイがツイッターに「ユン・ヨジョンの受賞すばらしい」と書き込むと、わずか1時間で「いいね」が1230件も付き、ユン・ヨジョンとグレン・クローズが一緒にいる動画を巡っては「バディ・ムービー(友情が題材の映画)を撮ろう」という書き込みが人気を集めた。こうなると、ほとんど「ユン・ヨジョン・シンドローム」級だ。

 観衆をつかむステージ掌握力から、「ユン・ヨジョンを司会者に!」と請願する動きも生まれた。先の英国アカデミー賞(BAFTA)受賞時の「お上品な(snobbish)英国人」という所感を「最高」に挙げた米ニューヨーク・タイムズ紙記者カイル・ブキャナンは、「来年のオスカーの司会はユン・ヨジョンに」とソーシャルメディアに載せ、さらに火力を増した。米国の人気コメディーショー『サタデーナイト・ライブ』(SNL)で司会者になってほしいというファンの要請もかなりあった。同番組は来月8日、テスラ社CEO(最高経営責任者)イーロン・マスクが司会者として出演する予定だ。

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