「絵の価格を上げたね。むしろお金をもらわなきゃ」

 先日、ソウル市松坡区のロッテワールドモール地下1階に展示されていた米国の画家ジョンワンの絵がいたずらされ、警察が出動した。誰かが許可なく作品に絵の具を塗った痕跡が見つかったからだ。関係者がすぐに監視カメラを確認した結果、同日午後1時40分ごろ、男女のカップルの仕業であることが分かった。翌日メディアがこの件を報じたが、インターネットユーザーたちの反応は意外だった。落書きのおかげで以前よりも絵がよくなったというコメントが相次いだ。

28日、ある観覧者が落書きした米国の画家ジョンワンの作品『無題』。中央の緑色の部分が落書きだ。/写真=聯合ニュース

 該当の作品は壁に描かれた落書きのようなグラフィティで、ジョンワンが2016年に来韓して描いた横700センチ、縦240センチの大型絵画だ。キャンバスに絵の具を垂らしたり飛び散らせたりする、いわゆる「アクション・ペインティング」技法などが用いられ、偶然性が積極的に反映された作品だ。高度な精密性や完結性を目標とした絵ではないということだ。

 展示会場に掲げられた絵の前には、小物として筆と絵の具が置かれていた。その日、該当のカップルは大胆に筆を取り、緑の絵の具で何かを描いた。人の形のようにも見え、ワンパターンな抽象に具象が与える躍動感が宿ったと評価されている。あるインターネットユーザーはこれを見て「落書きの部分はまるで3人がバレエをしているようだ」とした上で「これが現代美術ではないか」と問い掛けた。この絵の価格はおよそ5億ウォン(約4890万円)だという。

 このカップルは警察に対し「壁に落書きがあり、筆と絵の具があったので、落書きをしてもいいのだと思った」と説明したとのことだ。当時、展示会場の管理者はその場にいなかった。主催者側は今回の件について、故意にしたのではないと見て善処する方針だ。関係者は「作家側に、訴訟や保険処理をしない方向で話をしているところ」とした上で「作家が受け入れてくれなければ賠償はすべきだろう」とコメントした。

 「棄損」された作品は今も展示会場に飾られている。

チョン・サンヒョク記者

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