京畿道竜仁市水枝区古基洞にある「古基里マッククス(そば粉冷麺)」。平日昼にここに来ると、昨年Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)前にできた長蛇の列を思い出す。開店時間の午前11時を過ぎて到着すると、2時間は待たなければならない。「マッククスは赤い」という固定観念を覆し、「黒いえごま油マッククス」を流行させた店だ。

◆マッククスは黒い

 マッククスは次のような食べ物だった。マッコリなどのように「マッ(やたらに、むやみにの意)」巻き上げて食べることから付いた名前だ。待って食べるというよりは、早く空腹を満たす料理だった。

 しかし、この店のマッククスはそうではない。並んで待って席に着くと、豊かなそばの香り漂う麺の上にしょう油、えごま油、ごま、のりを振りかけたマッククスが出てくる。一口食べると、そばの風味とえごま油やごまの香ばしさ、のりから漂う海の香りが口の中いっぱいに広がる。スープまで平らげると、頭のてっぺんがピリッとし、自ずから「よく食べた」という言葉が出てくる。

 ソウルでえごま油マッククスを味わえるのは、江南駅近くにある「清流壁」だ。平壌冷麺の名店「平壌屋」が2018年にオープンした。店の片隅にあるえごま油搾汁機やそば製麺機を使って油や麺をつくっている。ゆでた牛肉や豚肉が皿に盛り付けられた「ばら肉盆」も有名だ。

◆伝統の老舗の味

 ソウル市東大門区にあるマッククスの名店として有名な「ソンチョン・マッククス」は最近、料理研究家ペク・チョンウォンの妻で女優のソ・ユジンがお気に入りの店として有名な老舗だ。味の秘訣は単純なこと。水マッククスを注文すると、氷が浮かべられた澄んだスープに麺だけが入って出てくる。からしや酢を入れる前にスープを一口飲んでみた。従業員は「熟成させたトンチミ(ダイコンの水キムチ)スープ」と言うが、甘酸っぱくない。ただ深いさわやかさ! 平壌冷麺が苦手な人も楽しむことができる味だ。

 「春川=マッククス」という公式をつくり上げた「セムバッ・マッククス」も外せない。3代にわたって受け継がれた味。ごまやのり、ごま油、薬味だれがかかっている麺を混ぜて食べ、半分くらい残した汁に冷たいスープを注いで飲むという公式をつくり上げた店だ。マッククスが食べたいときに思い浮かぶ、最も定番の味だ。

イ・へウン記者

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