映画
「メディアは権力にどのように立ち向かうのか 新聞記者を通して見せたかった」
安倍政権批判した映画『新聞記者』 17日韓国公開を前に日本の制作陣が訪韓
シム・ウンギョンが社会部記者役で主演
「監督オファーを2回断りました。政治に関心がなかったんです。ニュースはインターネットでしか見ないし、紙の新聞は見たこともありません」
15日午前、ソウル市内の映画館「狎鴎亭CGV」で行われた記者会見で、映画『新聞記者』の藤井道人監督(33)が笑った。17日の韓国公開封切りを前に藤井監督と河村光庸プロデューサー(70)が韓国を訪れた。「最終的に監督を引き受けることにしたのは、若い世代が今日の政治を見つめる視線を盛り込むべきだという河村さんの切なる説得があったからです」と藤井監督は言った。
日本で今年6月に公開されて話題になり、観客33万人を動員した。政治批判映画がほとんどない日本ではあまりない試みだったが、異例の成功となった。河村プロデューサーは「メディアが政権にどのように対抗できるかを示したかったのです」と話す。「人が、この時代に保身を超えて持つべき矜持についての映画だ」(是枝裕和監督)、「時代を映す鏡」(朝日新聞)などと好評を博した。
この映画は東京新聞の望月衣塑子記者が書いた本から始まった。望月記者は2017年のある定例記者会見で、官房長官に安倍晋三政権の私学スキャンダルについて執拗に質問して話題になった人物だ。映画では地方新聞社の社会部記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)が「内閣が直接、大学新設を主導している」という匿名の情報提供があったことを公表する。すると、内閣情報調査室が随時、編集局に電話をかけてくる。「今、取材していることは誤報だ」。誇張なしに政権の巨大な不正とさまざまな癒着関係が暴露される。フィクションだが、現実に重なる。
安倍政権を狙った映画だけに、困難も多かった。藤井監督は「(政権の)直接の圧力はありませんでしたが、『やってはいけないのでは』『やらない方がいいのでは』と心配する周辺の人々の雰囲気が感じられました」と言った。河村プロデューサーは「テレビでは私たちの映画を全く取り上げてくれませんでした。ラジオでのプロモーションも断られました。一部の新聞やソーシャル・メディアを通じてのみ、映画をPRできました。このようなことがまさに圧力です」と語った。
新たなプラットフォームやニューメディアがあふれる時代に「新聞記者」をテーマにしたのは、依然として伝統的なメディアの役割は有効だと考えたからだ。「なぜ新聞を取り上げたのか」という質問に河村プロデューサーが出した答えは意味深長だった。「国民が新聞を読まないのは、政権にとっては非常にうれしいことです。新聞を読んで、政治に関心を持たなければなりません。新聞が民主主義を守る基地になることを願っています」。そして最後に、「日本では安倍首相に見てほしいと言いましたが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領にもぜひ見てほしいです」と言った。