9人きょうだいの真ん中だった母は、9歳下の末の妹を忙しい親の代わりに世話していたという。幼い末の妹が泥まみれになって帰ってくると服を洗濯し、鼻水を垂らしていれば水道のところに連れていって洗ってやったようだ。母が育てた最初の子どもは、ひょっとすると長女の私ではなく、おばだったと言えるかもしれない。そんなおばは、私が小学校4年くらいのとき、「結婚する人ができた」と打ち明けた。「お姉ちゃんに一番先に会わせたいのだけど、家に連れていってもいい?」と言って。なかなか答えられずにいた母は、「何を作ったらいいかな?」と一言。食事の話だった。

 おばの夫になる人が来ることになっていたあの日、母は朝から狭いキッチンで奔走していた。豚ロース肉をハンマーでたたき薄く広げた後、塩コショウを振って下味をつけ、小麦粉、卵、パン粉をつけてサクッと揚げた。とんかつだった。

 熱した油に入れられた肉は真夏の夕立のように大きな音を立てて揚げられ、母はその横で黙々とインスタントスープ、ソースを作った。ケチャップとマヨネーズをかけたキャベツサラダ、ゆでたマカロニと缶詰のコーン、半分に切ったミカン…さらにこれらをのせてとんかつを盛るまで、幼い私は半分くらい口を開けたままじっと眺めていた。やがて到着したおばと恋人は驚き、おばは「ええ、こんなにすごいものを用意してくれたの?」と言っていただろうか。母はただほほ笑みを浮かべていたような気がする。その後も私はときどき、あの日のとんかつが思い浮かぶ。振り返ってみると、野暮ったくて心苦しいが、あのときの私たちにはごちそうだった。傘の飾りがのったパフェ、合コンで食べたスパゲッティ・ボロネーゼ、友人の家で初めて食べたオムライスのようなもの。

 ソン・イェジン&ソ・ジソブ主演の映画『いま、会いにゆきます』でも、主人公が初デートでとんかつを食べる。男性は女性によく見られたい一心で父親のスーツまで羽織り、洋食店に女性を連れていき、ナイフでとんかつを切る。気まずくてぎこちない切り方、首元のぎこちない蝶ネクタイ。しかし、とんかつを食べながら2人はさらに親しくなる。なぜとんかつなのかと思うけれど、振り返ってみると分かる気がする。あのときはとんかつでなければならなかったのだ。

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