韓国芸能事件簿
V.I逮捕状請求棄却、頭を痛める韓国警察
人気グループBIGBANGの元メンバー、V.I(28)=本名:イ・スンヒョン=に対する逮捕状請求が14日、裁判所で棄却された。V.Iと共に投資会社を設立した人物(34)に対する逮捕状請求も棄却された。警察はV.Iの逮捕でいわゆる「バーニングサン事件」の捜査に決着を付けようとしていたが、逮捕状請求が棄却されたことで、捜査に不十分な点があったことを指摘された形になった。
ソウル警察庁広域捜査隊と知能犯罪捜査隊は、V.Iと共同設立者が2015年に韓国を訪れた日本人投資者一行に性接待をし、自分たちが投資したソウル市江南区のクラブ「バーニングサン」の資金を横領しようとした容疑で捜査してきた。ところが、ソウル中央地裁のシン・ジョンヨル逮捕状担当部長判事は「横領の部分は争点となる余地がある。ほかの容疑でも逮捕事由を認めるのは難しい」として逮捕状請求を棄却した。
バーニングサン事件は昨年12月から韓国で関心の的となってきた。インターネット上では、「警察の後ろ盾を得てクラブで芸能人や外国人などが性犯罪を行い、薬物を使用していたのではないか」という疑惑が既成事実のように飛び交った。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「徹底的に捜査せよ」と指示し、ミン・ガプリョン警察庁長官も「警察の命運をかけて捜査する」と言っていた。警察は捜査人員152名を投入、105日間にわたり捜査してきた。
警察内部ではこれまで、V.Iの逮捕を今回の捜査の「クライマックス」だとしてきた。警察はV.Iに合計18回、事情聴取した。V.I側の弁護人は「警察は横領という枠にはめて過度に追い込んだ」として約70枚分の弁護人意見書を警察ではなく検察に提出した。
警察がV.I逮捕にこだわったのは、バーニングサンとかかわった警察癒着捜査の成果が振るわなかったためだという見方がある。今回の捜査で、警察は現職警察官8名を立件し、このうち1名を逮捕した。しかし、この中でバーニングサン癒着に直接かかわったのは、バーニングサンに未成年者が出入りした事件を適切に処理しなかった警察官1名だけだ。唯一逮捕されたこの警察官は、別のクラブで以前起きた未成年者の出入り事件をもみ消した容疑だ。
警察関係者は、バーニングサン事件の発端となった昨年11月の暴行事件でも、「警察とクラブの癒着は確認されなかった」と言った。この事件は、クラブの客(28)がバーニングサンで店員とケンカになったというものだ。この客は性犯罪を防ごうとして暴行を受けたが、出動した警察官がクラブ側をかばったという疑惑を取りざたした。警察は、地区隊(交番)勤務者全員を調べたが、この客が主張するようなことは確認できていないという。
バーニングサンに投資したV.Iと共同設立者をかばったとの疑惑が持たれている総警=警視に相当=(49)の捜査も「大山鳴動して鼠(ネズミ)一匹」(騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さい)という声が出ている。V.Iや共同設立者らが参加していた歌手チョン・ジュニョン被告(30)=逮捕・起訴済み=のグループチャット内容を国民権益委員会に情報提供した弁護士は、3月13日にラジオ番組に出演して「V.Iらは警察署長より上の階級の人物と癒着していた」と主張して大きな騒動となった。この総警はグループチャットで「警察総長」と呼ばれていた。
だが、この総警はかつてV.Iらが経営していた別のクラブの警察捜査情報を調べた疑い(職権乱用権利行使妨害)のみ適用されるものと思われる。この総警は共同設立者らから食事の接待・ゴルフ接待・コンサートチケットなどを受け取っていたが、見返り的な性格がないため「わいろ」と見なすことができず、額が少ないため不正請託禁止法を適用するのは難しいと結論付けられたとのことだ。
このため、警察内部でも「大統領府や世論の顔色を見ていたら『牛刀をもって鶏を割く』(小さな物事を処理するのに必要以上の大がかりな手段を用いること)になる」との指摘も出ている。「世論に押されて捜査人員を多数投入したのに、結局は『警察捜査不信』という逆風が吹いた」ということだ。文在寅大統領は3月18日にバーニングサン事件について、「違法営業や犯罪行為について、管轄警察署や国税庁など一部の権力機関が癒着し、黙認・ほう助・特恵を与えたという疑惑が濃い事件だ」と述べた。ソウル警察庁はこの翌日、バーニングサン捜査人員を16チーム・152名に拡大した。
ソウル警察庁関係者は「警察の徹底した捜査で風俗店と組織的な癒着がないことを明らかにしたものだ」としながらも、「国民は『シッポ切り』『無能捜査』と見ているため、(警察)内部でも頭を痛めている」と語った。別の警察関係者は「検察と警察の捜査権調整局面で悪材料が出ることになった」と言った。