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視聴率至上主義がもたらした韓国テレビ局・芸能事務所のモラル欠如
男性アイドルグループBIGBANG出身のV.I(28)=本名:イ・スンヒョン=による性接待疑惑や歌手チョン・ジュニョン(30)の性行為動画違法流布事件にファンも視聴者も一斉に激怒した。バラエティー番組『ハッピーサンデー』の人気コーナー「1泊2日」(KBS第2)などの出演番組やファンクラブの掲示板には視聴率至上主義でモラルが欠如したテレビ局・芸能事務所への批判が殺到、疑惑に関与したとされる歌手のファンクラブでは「退会ラッシュ」現象が起こっている。
チョン・ジュニョンについては、2016年の交際相手に対する盗撮事件からわずか4カ月で「1泊2日」に復帰したことをめぐり、「公営放送が事実上の免罪符を与えた」との指摘が多数あった。ある視聴者は14日、KBS公式サイトの掲示板に「16年にチョン・ジュニョンが違法撮影で告訴された時、『1泊2日』制作スタッフが復帰させなかったら、その間に多数発生した性犯罪被害者を1人でも減らすことができたはずだ」と投稿した。この視聴者はさらに、「復帰したチョン・ジュニョンに『苦労したね』とハグして慰めたり、笑ったりしていたほかの男性出演陣の姿も見たくない」とも書き込んだ。
ファンクラブ退会も続いている。この日、芸能関連のコミュニティーサイトには「チョン・ジュニョン盗撮事件」に関与した男性アイドルグループHIGHLIGHTのメンバー、ヨン・ジュンヒョンのグループ脱退告知に800件のコメントが寄せられた。「自分自身が情けない。ファンをやってきた10年間という歳月があいつの低俗な行為で崩壊したのが恥ずかしい」といったものが多かった。チョン・ジュニョンのファンクラブは2000人減り、BIGBANGの公式ファンサイトにも「脱退するために(同サイトに)来た」「(所属事務所)YG(エンターテインメント)はこのようなことに巻き込まれるまで管理・監督もせずに何をやっていたのか」「ヤン・ヒョンソク(同事務所代表)が恨めしい」などの投稿が殺到した。
芸能界全般に広がっている今回のスキャンダルは、視聴率のためなら手段を選ばない放送業界の制作慣行や、これを悪用して所属芸能人のスキャンダルを隠そうとする芸能事務所の利害が一致した代表的な事例だ。文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は「『嫌疑なし』を無罪だとして簡単に番組に復帰させた事例を含め、倫理や道徳の問題をテレビ局は非常に軽く見ている。視聴率を重視する一方で、徹底した検証を無視する慣行が今回のスキャンダルを生んだ」と語った。
芸能事務所の道徳観欠如は特に深刻だ。V.Iはバラエティー番組『シングル男のハッピーライフ』(MBC)や『みにくいうちの子 もう一度書く育児日記』(SBS)などに出演、クラブや日本式ラーメン店を経営する自身の姿をアピールした。『ラジオスター』(MBC)ではクリスマス・パーティーで露出の多いサンタ・コスチュームをした外国人女性を後ろに並ばせ撮影した写真を指して、「これが本当のセレブ・ライフ」と紹介した。V.Iが出演したネットフリックスの番組『YG戦略資料本部』は薬物犯罪や職場の性暴力をコメディーのネタにして批判された。