▲日本の人気バンド「SEKAI NO OWARI」。左からNakajin、Saori、Fukase、DJ LOVE。DJ LOVEはピエロのマスクを決して脱がない。/写真=チャン・リョンソン客員記者

 「『いいかい君は病気だから』とお医者さんがくれた/この薬を飲んだなら/君は深い眠りに堕ちるんだ/明日また起きたら何か始めてみよう」

 鈴の音を交えたアコーディオンの旋律、行進曲風のパーカッション、そして少年の美声がセットになった「SEKAI NO OWARI」(旧称・世界の終わり)の曲「銀河街の悪夢」は、どこか童話のようにも聞こえる。しかし、最近ソウルで会ったボーカルのFukase(32)は「僕の実際の経験が一番よく反映された曲」と語った。それも高校生のころ、四方を灰色の壁で囲まれた精神病院で、四肢を拘束された状態で鎮静剤を注射され、意識が混濁した経験だった。小学生のころから患っていた注意欠如・多動性障害(ADHD)がひどくなったせいだという。

 およそ1年にわたる闘病の末、これ以上落ちる場所がないところまで落ちた彼を救ったのが、今のメンバーと音楽だった。幼稚園時代からFukaseの友人で、小学校ではいじめに遭っていたSaori(31)=キーボード=。2人と同じ小学校・中学校に通っていたNakajin(32)=ギター=。そして、バンドのマスコット的存在でピエロのマスクを絶対に脱がないDJ LOVE(32)。Fukaseが探し回っていた絶望の中の希望を、ともに楽曲に移し替えた。各メンバーが1億ウォン(約1000万円)相当の借金をして、共同作業場「セカオワハウス」やライブハウス「club EARTH」まで建てた。「全てを失った状態から始めたグループ名という意味でも、自然と『世界の終わり』になった」。

 2010年にデビューした彼らは、今や日本で最高の人気バンドと呼ばれる。15年には14万席規模の横浜日産スタジアムを2日間満席にした。また、7月にソウルのオリンピック公園で開かれたサウンドシティー・コンサートには、日本語の歌詞はもちろん、最近韓国のバンドEpik Highとコラボした新曲「Sleeping Beauty」まで正確に合唱する韓国ファンがどっと押し寄せた。

 「歌詞を書くたび、少なくとも6時間以上は自転車に乗りながら、見て考えたことを詰め込む」というFukaseは、全ての作品のことを「僕が歩んできた道そのもの、アルバム」と呼んだ。願掛けの絵馬にFukaseの自伝的な歌詞が書かれた写真が、ソーシャルメディアによくアップされる。「誰かからのSOS」(Hey Ho)、「怖くても大丈夫、僕らはもう一人じゃない」(RPG)など、力をくれる歌詞が多い。「中卒が書いた歌詞で願いごとをするんだから、人生はほんとに分からない」と言って笑っていたメンバーらは「最近、フルアルバムの準備を始めた」と語った。「自分の墓碑銘にも僕らの歌詞を刻みたくなるほど、誰かの力になれる曲を書き続けたい」

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