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ユニークな「飯テロ」描写が人気の女性お笑いタレント
「釜に牛骨を入れて二日間、コトコトコトコトじっくり煮るの。濃ゆ~いスープが出てくるから、そこにウゴジ(干したハクサイ)をたっぷり入れて煮立てれば、これでゲームオーバーってわけ!」
女性お笑いタレントのイ・ヨンジャ(50)の牛肉クッパ(スープご飯)の描写に思わずツバをのみ込んだ。「食欲がない」と言っていたマネージャーは何かに取りつかれたようにクッパを注文し、イ・ヨンジャの言うがままに食べる。スープを2回ほどすすり、肉を一口食べてから白飯を投入する。「モクバター」(モクパン〈食べる様子を見せる放送、飯テロ〉+アバター)というニックネームを持つマネージャーのソン・ソンホさんは「食べろというから食べてみたらおいしかった」と笑う。
イ・ヨンジャが第2の全盛期を迎えている。MBCの観察バラエティー番組『全知的おせっかい視点』で各地のおいしい庶民的な店を紹介したり、高速道路のサービスエリアに立ち寄って名物料理を食べたりして再ブレークを果たした。放送が終わると、「イ・ヨンジャ キムチギョーザ」「イ・ヨンジャ ホットドッグ」など、彼女が食べた物がリアルタイム検索ワードの上位に浮上、立ち寄った店は「イ・ヨンジャ・グルメマップ」という名前でソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で共有される。「マッビゲーション」(マッ〈味〉+ナビゲーション)という愛称も付けられた。
「チャッククス(松の実めん)食べた? コングクス(豆乳めん)がこのイ・ヨンジャなら、チャッククスは(『宮廷女官チャングムの誓い』の主演女優)イ・ヨンエだよ」。イ・ヨンジャの直感的な味の表現は、ほかの「飯テロ」とは明らかに違う。「『あたしはハチミツよ~』ってジャガイモがうそをつく味」(新ジャガの砂糖じょうゆ煮)、「牛一頭を丸のみした感じ」(韓牛ステーキ)、「私がまるで貴族になったみたいな味」(韓定食)のように、実際の経験と内面からわいてくる味の例えを聞くと、視聴者たちはイ・ヨンジャの「モクバター」となる。SNS上には「ヨンジャ姉さんの言いなりになって食べた」という自撮り写真が次々とアップされ、イ・ヨンジャが一度食べた物は店で「完売」になる。
人気の秘訣(ひけつ)は「真実味」だ。『全知的おせっかい視点』のカン・ソンア・プロデューサーは「『飯テロ』をコンセプトに始めたわけではない。ご本人が知っているおいしい食べ物をマネージャーや周囲の人々に自然と勧めていたのが奏功した」と話す。イ・ヨンジャのデビューを手助けし、約30年にわたって見守ってきたベテラン芸人のチョン・ユソンも「イ・ヨンジャは言葉だけではなく、ほかの人たちを心から思って勧めている。それが視聴者にも通じているのだろう」と言った。
2010年から司会をしているKBSのお悩み相談番組『対国民トークショー アンニョンハセヨ』がイ・ヨンジャ復活の「のろし」だった。泥酔すると急変する夫のせいで苦労している主婦の前で「今どき酒を飲んで、ちゃぶ台ひっくり返す人がどこにいるのよ」と一緒になって怒り、弟に10年間も金をねだりながら暮らしている甘ったれの兄には「私も売れない時代があったけど、夜の舞台を飛び回ってもでもお金を稼いで、家族の助けは借りなかったわ」と厳しくアドバイスする。女子高生が「お父さんが私のことを愛しているかどうか分からない」と吐露すると、「うちの父も私に愛していると一度も言わなかったし、だからさまよっていた。子どもには条件なしに愛を与えなければ。そうして初めて、世間を生き抜く力が得られるんですよ」と一緒に涙を流した。
「肉よ、肉よ、私の肉よ」「いらっしゃらないならオーライ」などの流行語を産んだ、隣の家のお姉ちゃんのようなイメージ、痛快なトーク力で1990年代を風靡(ふうび)したお笑いタレントの復活を視聴者たちは喜んでいる。2001年、「ダイエットで30キログラム以上減量した」と話した一方で脂肪吸収手術も受けていたことが発覚した、いわゆる「ダイエット騒動」で人気が急落したものの、「飯テロ」で復活したイ・ヨンジャ。「名前を無断で利用されることもあるのでは」と聞いてみると、彼女は「庶民的な食べ物ですから。私の名前を使ってお店がもうかるなら、それでいいんです」と豪快に笑った。まさしく「イ・ヨンジャ全盛時代」だ。