喝采はなかなか鎮まらなかった。5月14日(現地時間)、フランスのカンヌ国際映画祭で初めて公式上映された是枝裕和監督(55)の映画『万引き家族』がエンディングを迎えると、観客は一斉に立ち上がった。この日のスタンディングオベーションは、ことのほか熱く、そして長かった。

 5月16日現在、カンヌの「スクリーン・デイリー」が付与した『万引き家族』の評点は4点満点で3.2。これまでに上映された作品のうちトップだ。「フィルム・フランセーズ」は評点2.92を付け、こちらではロシア映画『Leto』に次いで2位となった。有力な「黄金の棕櫚(パルムドール)」候補というわけだ。今年のカンヌ映画祭コンペティション部門は21作品で争われ、この時点で13作品が公開された。

 タイトルの『万引き家族』とは、「万引きをする家族」でもあり、「万引きするかのように手に入れた家族」でもある。万引きで生計を立ててきた5人の家族は偶然、寒さに震える5歳の少女に会い、家に連れてきた。同居していた祖母が亡くなると、家族は年金をもらい続けるため、祖母の死を隠した。5月15日に現地で行われた記者懇談会で、是枝監督は「ニュースで報じられた事件を基にした作品」と語った。このところ日本で社会問題として浮き彫りになっていた年金不正受給もその一つ。是枝監督は「二極化が深刻になり、社会のセーフティーネットは崩れている。その中で家族の生存とはどういうものか、描いてみたかった」と語った。

 2004年の『誰も知らない』で、親に捨てられ書類上は存在すらしなくなった4人きょうだいの物語を描いた是枝監督。『歩いても、歩いても』(2008)、『そして父になる』(2013)、『海よりもまだ深く』(2016)と、是枝監督は常にポケットの中の画鋲のように何気なく、鋭く人を突いて泣かせる家族映画を制作してきた。「なぜそれほど、亀裂の入った家族にこだわるのか」と質問された是枝監督は、ゆっくりと答えた。「私たちはみんな、そういう家族の中で生まれ、育ってきた。その家族がまた別の家族を生む。映画が絶望と痛みという井戸から汲み上げられるものならば、私はその井戸を家族に求めている」

 ほかの作品がそうであるように、『万引き家族』は重いテーマを取り扱いながらも、午後の日差しのように柔らかい。家族が集まって食事をするシーンや、雨の日に床に座って雨の音を聞いているシーンがそうだ。是枝監督は「私たちには美しさが必要」と語った。「父と息子が釣り竿を盗むシーンも、ニュースを基にした。ある万引き家族が捕まったとき、盗んだ物の中に釣り竿があった。その家族の趣味が釣りだった。その話を聞いて、悲しいが美しいと思った。私たちの暮らしもそうだ。壊れて傷んでも、その中にはしばしば美しい瞬間がある。私はそれをすくい上げたかった」

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