今年3月に総合編成チャンネル「TV朝鮮」で男性アイドルグループの防弾少年団(BTS)を見た。『アイドル祭り』という番組に大勢で一緒に出てきた。リパッケージ・アルバム『WINGS外伝 : You Never Walk Alone』を出したころで、ビルボードチャートにランクインしていた。米国で生まれ、英語で歌う歌手でもほとんどがビルボードチャートにランクインするどころか、その近くにさえ行けない。防弾少年団は冗談と愛嬌(あいきょう)とダンスにたけ、不思議なことに興味をそそられる。いつもの見事な振り付けを、目を閉じてやって見ろと言われてドタバタしていた。観客はとても楽しそうだ。

 その2カ月後、防弾少年団のメンバー7人が米国の「ビルボード・ミュージック・アワード」で賞を取った。馬ダンスをしながら『江南スタイル』を歌ったPSY(サイ)が4年前に取った賞だ。韓国人歌手としては2番目、アイドルグループとしては初の受賞だった。音楽賞は普通、いくつかの部門に分かれているが、防弾少年団は「トップ・ソーシャル・アーティスト部門」だ。歌に社会的なテーマを織り込み、ファンとのコミュニケーションも格別だっという意味だ。1990年代のソテジやHOTが歌った反抗的・参加的・時代的な雰囲気を思い起こさせる。

 防弾少年団は米時事週刊誌「タイム」が選んだ「インターネット上で最も影響力のある人物25人」にも選ばれた。トランプ米大統領、『ハリー・ポッター』シリーズの小説家J・K・ローリングと共に名を連ねた。秋にはミニアルバム『LOVE YOURSELF 承“Her”』が「ビルボード200」の7位に入った。韓国人歌手では最高記録だ。先日は米国の3大音楽賞授賞式の1つ「2017アメリカン・ミュージック・アワード」祝賀公演のステージにも立った。米国のテレビ番組が先を争うように出演オファーを出し、今年の年末番組にも出演する。

 ライブ映像をちょっと見れば、「米大陸に大きな衝撃を与えた世界的なスーパースター」の人気を実感できる。何千人もの観客が「BTS」と連呼して足を踏み鳴らし、感動とすすり泣きが言語の壁を越えて巨大な渦となる。簡易投稿サイト「ツイッター」公式アカウントのフォロワー数は1000万を超え、この3年間で動画共有サイト「ユーチューブ」の再生回数は52億回を超える。彼らは(金のスプーン〈生まれながらに財力に恵まれた環境〉に対して)「土のスプーンのアイドル」と呼ばれている。SMエンターテインメント・JYPエンターテインメント・YGエンターテインメントという三大芸能事務所に所属しているアイドルではない。練習生時代は「先行き不透明で食べていけるのだろうか」と心配したという。

 彼らはコミュニケーションを重視している。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)もメンバーそれぞれのアカウントではなく、グループでやっている。控室や滞在先でのささいな日常の出来事をアップする。同年代の若者たちに見せる成長日記のようだ。愛ではなく悩みや迷いを書き込む。グループ名も社会的偏見という弾丸を防ぐという意味で「防弾」という。「底辺から始め今現在まで」を見せる音楽だ。世界の若者が何を求めているのか真っ先に気付くのは、こうした韓流の想像力があるからだろう。

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