▲マ・ドンソクは、観客動員数が400万人を超えた映画『犯罪都市』(写真左)で、力強くワイルドな刑事を演じた。11月に公開される『ブラザー』では、無能で情けない塾講師を演じ、かわいらしいアヒル柄の青いシャツを着てコミカルな演技を披露する。/写真提供=MEGABOX PLUS M・Kiwi Media Group

 今秋の韓国映画界は「マヨミ」が席巻した。「マヨミ」とは、俳優マ・ドンソク(46)の姓と、新造語「キヨミ」(かわいい人の意)を組み合わせた言葉。「ラブリー」から来る「マブリー」という別名もある。マ・ドンソク主演の映画『犯罪都市』(カン・ユンソン監督)は、秋夕(中秋節、今年は10月4日)の連休も終わりかけた10月8日から恐るべき底力を発揮、『南漢山城』や『キングスマン:ゴールデンサークル』といった競合作を抑え、11日間連続で観客動員数1位を守った。10月25日現在、同作の累積観客動員数は517万人を記録している。

 同じくマ・ドンソク出演のコメディー映画『ブラザー』(チャン・ユジョン監督)も、11月2日に封切りされる。同作は、ミュージカルや映画になった『キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~』の劇作家で演出家でもあるチャン・ユジョン監督が手掛ける新作。この『ブラザー』も、チャン監督がミュージカル『兄弟は勇敢だった?!』を自らスクリーンに持ってきた。韓国の秋の劇場街は、マ・ドンソクで始まりマ・ドンソクで終わるようなものだ。

 ワイルドで強靭な男らしい姿と、どこか間が抜けていてキュートな「二つの顔」が共存している点こそが、マ・ドンソクの魅力。強力班(凶悪犯罪担当)のベテラン刑事を演じた『犯罪都市』でも、マ・ドンソクは男らしい魅力を振りまいた。何でもないという顔つきで、携帯電話で話をしながら、刃物まで飛び出したけんかを素手で制圧してしまう冒頭の場面はまさに圧巻だった。

 実際、マ・ドンソクは米国の大学で体育学を専攻した。米国でボディビルダーやジムのトレーナーとして活動し、異種格闘技選手の専属コーチを務めたこともある。10月17日、『ブラザー』試写会後に行われた記者懇談会で、俳優イ・ドンフィは「映画で一緒に横になって眠るシーンがあるが、彼の腕は脚と見間違えるほど分厚くて、とてもびっくりした」と語った。

 マ・ドンソクは2004年に韓国で俳優デビューした後、映画やドラマで義侠心に燃える刑事の役を主に演じてきた。だが、観客1340万人を動員した15年の映画『ベテラン』(リュ・スンワン監督)を機に、新たな魅力が生まれた。マ・ドンソクは同作に、不条理なことを見るとがまんできない、ファンシーショップの店主役で友情出演した。ごく短時間の登場だったが、この映画でマ・ドンソクが口にした「おれはそこのアートボックスの社長なんだが…」というせりふは流行語になった。マ・ドンソクの男性的なイメージとファンシーショップというズレた魅力が衝突し、爆笑を呼んだというわけだ。

 アクション一辺倒だったマ・ドンソクの出演作も、コメディーやホラーなどへとさらに広がった。マッチョと純情派、まともそうだが見かけ倒しのはったりに至るまで、俳優の資産となるさまざまなイメージを積み上げたのもこの頃からだ。観客1156万人を動員した昨年の映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』では、疲れを知らぬ体力と腕っぷしでゾンビを退けるが妻のため犠牲になるサンファ役で、カンヌ国際映画祭でも熱狂的な反応を得た。ファンがマ・ドンソクの個性に目を付けて「マヨミ」「マブリー」といったニックネームを付けたことをめぐっては、双方向的(インタラクティブ)なオンライン文化の恩恵を受けた、と評されている。

 韓国映画界ではマ・ドンソクを、クマのような外見とキツネのような魅力を兼ね備えた俳優と評している。チャン・ユジョン監督は「マ・ドンソクは、カメラの動きや俳優の演技の動線を徹底して計算に入れて撮影に入るという点で、責任感が強く理性的。アクションや温かい人間味はもちろん、コメディーにも生まれながらの素質を持っている俳優」と語った。

 今年末に公開予定の『神と共に』や『ワンダフル・ゴースト』、また18年公開の『コムテンイ』『チャンピオン』といった映画の撮影が進行中、もしくは出演が決まっている。当分は「マヨミ」現象が続きそうだ。マ・ドンソクは「月に30-40本ほどシナリオが届くが、その中から選んで年間4本くらい出演している」と語った。10月17日の記者懇談会でマ・ドンソクは、成功した俳優の模範回答のようなコメントをした。「感謝の気持ちだけですね。これまで同様、黙々と一生懸命やるつもりです」

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