人気アイドルグループSUPER JUNIORのメンバーで俳優チェ・シウォンさんの家族が飼っていた犬にかまれ、6日目に敗血症で死亡した有名韓国料理店「韓一館」代表(53)の死因をめぐり、論争が巻き起こっている。治療をしたソウル白病院と遺族側は「犬の口内の細菌が被害者の体に入って敗血症を起こした」と考えている。しかし、敗血症を起こした緑膿菌は「院内感染」の主原因であり、犬の口内から見つかることはあまりないため、「死亡した被害者は病院で感染したのでは」という声もある。

 さらに、犬の飼い主であるチェ・シウォンさん側がソウル市江南区庁に「韓一館代表をかんだ犬の口から緑膿菌は見つからなかった」という動物病院の所見書を提出していたことが24日に分かり、火に油を注いだ形になった。同区庁は25日、首輪やリードなどの安全対策を取ることを義務付けている動物保護法に違反したとして飼い主であるチェ・シウォンさんの父親に過料5万ウォン(約5000円)を科した。

■敗血症起こした原因菌をめぐる論争に発展

 死亡した被害者の血液やたんなどからは敗血症の原因とされる緑膿菌が検出された。感染内科のある医師は「犬にかまれて緑膿菌敗血症を発症した例は世界で6件しか報告されていない極めてまれなケースだ」と話す。犬にかまれた場合に感染する細菌の多くは、犬の口によくあるブドウ球菌系だ。犬の口腔(こうくう)内の細菌分布で緑膿菌が占める割合は6%だという研究結果もある。一方、緑膿菌は院内感染でよく検出される細菌に挙げられる。このため、「犬にかまれた傷とは別に、被害者は病院で二次感染した可能性がある」という指摘もある。緑膿菌は消毒剤に強く、きちんと傷を消毒しても二次感染の可能性は残る。

 一方、被害者を治療したソウル白病院と遺族側は、犬にかまれたことが敗血症の原因だと考えている。病院側が公開した傷の写真を見ると、2-3センチ大の歯形が複数、被害者の左ひざ下に深く残っているのが分かる。ソウル白病院に医師として勤務している被害者の姉の夫は「院内感染は主に長期入院中だったり、免疫力が低下したりしている患者がかかる。故人(被害者)は糖尿病やがんの治療を受けたことがなく健康だった。そのような人が、雑菌が付着した犬の歯で血管が裂けるほど深くかまれ、敗血症を発症したのだから、別の原因は考えられない」と語った。ソウル白病院も25日、正式なコメントとして「患者は傷の治療のため当病院にいた時間は約1時間と短く、院内感染が起こる可能性はないと判断される」と明らかにした。

 緑膿菌抗生物質感受性試験では、「複数の抗生物質が広くよく効く緑膿菌」という結果が出た。院内感染で検出される緑膿菌は普通、抗生物質に対する耐性が強い。つまり、これは被害者の体から検出された緑膿菌が病院内にあったものではなく、病院の外、すなわち犬の口から感染したものである可能性が高いことを意味する。嘉泉大学吉病院感染内科のオム・ジュシク教授は「院内感染の緑膿菌の20-30%は抗生物質に耐性がないという結果が出るので、耐性の強さだけで感染源を突き止めるのは難しい。耐性がない菌であるほど毒性が強く、敗血症を引き起こす可能性が高い」と言った。一方、ある獣医は「緑膿菌を持つ犬は膿や悪臭があるのですぐに確認できる。ケアが行き届いているチェ・シウォンさん家の犬が緑膿菌を持つ可能性は低い」と語った。

■「6日目で敗血症により死亡」起こり得るのか?

 被害者は犬にかまれた日、救急治療室で傷の消毒処置を受け、受傷後の破傷風予防注射を受けた。さらに追加で「オーグメンチン」という抗生物質の注射を受け、3日分の薬を服用した。最初の処置はマニュアル通り適切だったが、結果論で言えば、緑膿菌の治療に適した抗生物質ではなかった。被害者は犬にかまれた後、5日間にわたり体のだるさを訴え、死亡当日の朝に高熱・せき・肺炎の症状で救急室に運ばれた。細菌感染が広がる潜伏期間の後、血が混じったたんが出る喀血(かっけつ)がひどくなり、出血が肺全体に広がったのだ。膜型人工肺治療(ECMO)も受けたが、同日午後5時ごろ死亡した。直接の死因は、細菌が血液中に広がる敗血症と、それによる「播種性血管内凝固症候群」だ。翰林大学医学部江南聖心病院のイ・ジェガプ教授(感染内科)は「敗血症時の血液凝固因子が結集・破壊され、全身に出血と血栓が発生する現象だ。傷口に深刻な筋膜炎が発生し、感染の拡大速度が早いと、まれではあるが1週間で敗血症ショックに陥ることがある」と説明した。

■緑膿菌とは
 感染時に緑色の膿が見られることから付いた名称。英語では「Pseudomonas aeruginosa(シュードモナス・エルジノーサ)」と言い、ぼうこう炎・中耳炎・胸膜炎などを引き起こす。入院患者が病院で細菌感染する場合は、この菌が原因であることが多い。犬の口の中にいる菌の6%前後が緑膿菌だと言われている。

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