映画
慰安婦映画『鬼郷』監督「知らなかった罪、映画で償わなければ」
「米国、日本、ドイツ、フランス、カナダ、インド、香港…10カ国61都市を回り、米議会を含め約1500回上映会を開きました。行く先々で『本当にこれはすべて事実なのか』『後続作はないのか』と聞かれました」
日本による植民地支配時代に従軍慰安婦だった女性たちの物語『鬼郷』(2015年)を手がけたチョ・ジョンレ監督(44)は「そのたびに言葉で説明するのには限界があった」と言った。「知識人たちでさえ従軍慰安婦制度を戦時集団性的暴行程度の偶発的・付随的損害だと誤解していました。自然な流れで、映画の中の少女たちの話や、その土台となったおばあさんたちの証言をまとめてドキュメンタリーとして再構成することになりました」。その結果が14日に公開される『鬼郷:終わらない物語』だ。監督は「映画よりも現実の方がはるかに残酷だったことを知らしめる『映画で作った証言集』です」と言った。
『鬼郷』を359万人の観客が見たのは、いわば奇跡だった。テーマが重く、当初は投資が受けられなかったが、市民約7万5000人が少しずつ出し合って製作費を補った。広報にも困難があったが、観客たちが立ち上がって映画館側にスクリーンを確保するよう訴えた。チョ・ジョンレ監督は『草の根の支援がすごかった。韓国国民の力でした」と言った。
ヒット映画の監督になり、少しはもうるかと思っていたが、そういう訳でもない。制作会社に入った収益は約100億ウォン(約10億円)。そのうち80億ウォン(約8億円)を小額投資者たちに投資額に応じて分配した。ノーギャラで出演した俳優たち、苦労したスタッフたちにインセンティブを渡し、元慰安婦たちが暮らす『ナヌムの家』にも5億ウォン(約5000万円)寄付した。全部配り、残ったお金で世界中を回り、無料上映会を開いた。今残ったのは3000万ウォン(約300万円)くらいだという。隣にいたノ・ヨンワン制作室長(28)に「社員たちのことも少しは考えなければならないのでは」と言ったところ、「もともとこういう会社だと分かっていて入りました」と笑った。ノ・ヨンワン室長は大学生の時に慰安婦を描いた舞台公演を手がけ、集まった寄付金5万ウォン(約5000円)を映画『鬼郷』に投資した縁でチョ・ジョンレ監督と一緒に仕事をするようになった。
チョ・ジョンレ監督は「2002年にナヌムの家に初めてボランティアで行く前まで、私は何も知りませんでした。慰安婦という言葉も聞きたくなかったし、避けたかったし…。ところが、おばあさんたちの言葉を直接聞いてがく然としました。病魔と闘いながら自身が経験した悲劇を繰り返し話すおばあさんたちがどれだけつらいことか。私も無知だったという罪を償おうと努力しているが、おばあさんたちの使命感には足元にも及びません」と話す。
また、監督は「女性の体を加虐的にさらし、民族感情を商業的に利用している」という批判にも答えた。「まず、おばあさんたちの証言集を読んだり、ナヌムの家で直接聞いたりしてほしいです。それでも同じ考えならば、その責任と非難は私が生涯、抱えていかなければなりません」。元慰安婦たちの話をさらに世界に伝えることに最大のやりがいを感じるという。「売国奴と言われながらも日本での巡回上映会を手配した日本の市民運動家たちも尊敬に値します。『日本の将来のためにもおばあさんたちの前で謝罪せよ』と言う方たちの声に、日本政府も耳傾けるべきでしょう」。
『鬼郷』ヒット後、商業映画の監督になってほしいというオファーもあったが、断った。次の作品も元慰安婦たちのドキュメンタリー映画だ。「実は私はナヌムの家のボランティアの1人に過ぎません。できることと言えば映画しかないから、おばあさんたちの『恨(ハン=無念の思い)』が晴れるまでずっと、映画でおばあさんたちの話を伝えたいです」。