K-POP
イ・ヒョリ4年ぶりの新譜、K‐POP専門家はどう見たか
歌手イ・ヒョリ(38)が戻ってきた。4年ぶりにリリースした6枚目のアルバム「Black」でイ・ヒョリは、収録された10曲のうち9曲の作詞、8曲の作曲に加わり、アルバムの共同プロデューサーにも名を連ねた。1998年の女性アイドルグループFIN.K.Lのデビューアルバム発売から計算すると、イ・ヒョリも今年でデビュー20年目になる。ヒット曲「10Minutes」や「U-Go-Girl」のようなブームを再現できるだろうか。『K‐POPの時代』を執筆した韓国ジョージ・メイソン大学のイ・ギュタク教授、アイドル音楽専門ウェブマガジン「アイドロジー」のムン・ヨンミン編集長(ペンネーム「ミミョ」)、テクノダンスミュージックの解説書『バック・トゥ・ザ・ハウス』の著者で大衆音楽評論家のイ・デファ氏らK‐POP専門家3人が、イ・ヒョリの新譜をチェックした。
■成熟した「妖精」
大衆文化の世界でイ・ヒョリがユニークなのは、アイドル出身ながら歌手やエンターテイナーというだけでなく、動物愛護やボランティア活動にいそしむ社会参加的な芸能人であるなど、多様なイメージを持っているからだ。大衆音楽評論家のイ・デファ氏は「ぱっと人気が出てもすぐに忘れられてしまうくらい急速に変化する芸能界で、20年にわたってはっきりした個性とイメージを積み重ねてきた点は、尊敬すべきところ」と語った。
今回のアルバムにも、従軍慰安婦のことを考えながらイ・ヒョリが作詞・作曲した「ダイヤモンド」のように、社会的な主張を盛り込んだ曲が収められている。この曲は抒情的なバラードで、イ・ヒョリは歌手イ・ジョクと一緒に歌い上げた。「アイドロジー」のムン・ヨンミン編集長は「チョン・ドヨンやキム・ヘスのように40代になっても大活躍している女優と比べると、アイドル出身の女性歌手はまれ。FIN.K.Lのイ・ヒョリとオク・チュヒョン、S.E.Sのパダなど第1世代の女性アイドルグループ出身歌手の活動は、そういう点でも価値がある」と語った。
■アレンジはいいものの作詞・作曲が残念
今回のアルバムには、同タイトルの「Black」をはじめ「SEOUL」のように、ヒップホップやリズム&ブルース(R&B)といった最近の音楽的潮流を反映させたナンバーが多い。しかし、アルバム全体の完成度については疑問を呈する評論家が多かった。イ・デファ氏は「全般的に編曲は見事だが、作詞・作曲の面では不十分・不安定な部分が少なくない」と語った。一方、イ・ギュタク教授は「明るくて聞きやすいメロディーや踊りやすいテンポといったK‐POPのトレンドから果敢に踏み出し、暗く重みのあるテクノミュージックとして差別化を試みた点は、高い評価に値する」と話している。
■女性歌手として長生きする可能性は十分
イ・ヒョリがテレビ番組で見せる軽妙ではつらつとしたイメージと新譜の重みがあって暗い曲調が衝突している、という指摘もある。イ・デファ氏は「『U-Go-Girl』のようなヒット曲にみられる、明るく軽快なスタイルに戻るのも一つの手」と語った。ムン・ヨンミン編集長は「イ・ヒョリは『床屋の娘』のように、具体的で簡単な歌詞を通じて共感を引き出してきた。こうした魅力を生かせば、作詞・作曲家兼歌手として長生きする可能性は十分にある」と話した。