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ヨガをしながら作品鑑賞!? 生まれ変わる美術館
夕暮れ時、ソウル市竜山区漢南洞にある「D MUSEUM」展示場には、アップテンポの音楽が流れていた。普段着ではなくトレーニングウエア、運動靴姿の20-30代がヨガ用マットの上で体を動かしている。美術作品の前でストレッチをし、横になったり座ったりを繰り返し、歓声を上げながら展示場を走り回ったりもした。ダンスと遊びが一緒になった「TANZ PLAY」ワークショップがここで開催されたのだ。静かだった美術館は一瞬のうちに「熱気あふれる運動場」に生まれ変わった。参加者ナ・ジヘさん(32)は「体を動かしながら床に座ったり横になったりして、さまざまな姿勢で作品を鑑賞し、新しく特別な経験ができたと思う」と語った。
美術館が変化を遂げている。美術館でヨガをしたり、腕を広げてジャンプしたりしながら、作品を鑑賞する。映画のタイトル風に言うとしたら、『美術館の隣の体育館』とでも言おうか。韓国ではまだ見慣れないが、海外では急速に増えている。
最も多いのがヨガ。作品を傷つける恐れが低く、大衆的な反応もいいからだ。美術館やギャラリーの床にカラフルなマットを敷いてストレッチからコブラの姿勢まで、1-2時間運動する。価格は入場券より少し高いくらい。
韓国の美術館やギャラリーでも少しずつこの運動文化が広まっている。「D MUSEUM」は今年4月、3週間にわたり「TANZ PLAY」ワークショップを開催。講師のシン・イェソンさん(30)は「運動しながら作品を眺めるのは全く新しい経験。目だけで見るという先入観が崩れた」と語った。一方、「D MUSEUM」のキュレーター、ヤン・ジンリョンさんは「展示場内では静かに絵を見なければならないという偏見を打ち破り、新たな鑑賞スタイルで展示のテーマをきちんと理解できるよう支援しようと思った」と話した。
ソウル市江南区大峙洞のギャラリー「スーペリア」は昨年から今年初めにかけて、1週間に2回、ギャラリーでヨガの授業を実施した。海外で行われている「ギャラリーヨガ」からアイデアを得て始めたという。午後6時半から、参加者たちが作品の前にヨガ用マットを敷き、講師とともにおよそ50分間運動した。会社員のシン・ドンウンさん(29)は「運動しながらキュレーターの説明を聞いていたら、特に興味のなかった芸術にも関心が生まれた」と言って笑った。ヨガの授業を行ったユ・ミヨンさんは「ヨガは体をほぐし、血のめぐりをよくするほか、集中力と記憶力が向上する。この状態で絵を見ると、周囲を気にすることなく自分の主観だけに集中し、鑑賞することができる」と語った。
一方、憂慮の声も上がっている。雑誌「Artsy」のダニエル・クニツ・エディターは「美術館がより多様な物客を誘致しようという努力は理解できるが、こうしたプログラムを続けると、『静かに瞑想する場所』という美術館の順機能を失いかねない」と語った。