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「出演者が真剣に商売するとは思わなかった」…『ユン食堂』ヒットの秘密
tvNのバラエティー番組『ユン食堂』は、ゆったりしているが興味深い。まぶしいほどの青い空と海が広がり、すずしげな水着姿の男女がのんびり自転車に乗っている。果てしなく余裕のある風景の一方には、忙しい食堂の厨房がある。ユン・ヨジョンをはじめイ・ソジン、チョン・ユミ、シン・グが、ハードな仕事を終えた後、甘い休息を楽しむ。
3月24日に第1話が放送され、視聴率6.2%でスタートした同番組は、第6話で最高視聴率14.1%をマーク。最終話が放送された5月12日は視聴率11.6%で幕を閉じた。このように熱い人気を集めた『ユン食堂』は、今年上半期に大物プロデューサー(PD)のナ・ヨンソク(41)が後輩PDらと「協業」を試みた、3本の番組のうちの1本。共同演出を担当したイ・ジンジュPD(31)がアイデアを出し、実務を主導した。ロケ地となったインドネシアの小さな島「ギリ・トラワンガン」は、昨年イPDが休暇を過ごした場所だ。『セレブの誕生』『完販企画』など創業関連のバラエティーの助演出を担当してきたイPDの経験と、旅行・料理というナPDの特技が組み合わさった。
CJ E&M公募第1期のイPDは、2013年にナPDのチームに合流して『花よりおじいさん』『三度の食事』などに参画してきた。『ユン食堂』はいかにして成功し、「ナ・ヨンソク師団」はいかにして毎回視聴者の心をつかむのか、尋ねてみた。
■雑談のような会議、サークルのようなチームワーク
ナPDのチームの会議室は、壁にこんな文言が記されているという。「ふざけるのをやめよう」「人が優先」「実力に優れた者にはライバルが生まれ、人間性に優れた者には助力者が生まれる」。
ナPDは、ほかのPDや放送作家などおよそ30人のチームを作って仕事をしている。その中で、いくつもの番組が同時に進んでいる。大抵のバラエティー番組では毎回スタッフが集まり、番組が終わると解散するが、ナPDのチームは放送作家のイ・ウジョン、キム・デジュなどを中心として数年にわたり維持されてきた。イPDは「ノウハウが蓄積され、前の番組で足りなかったところを、次の番組では補完できる。チームの雰囲気はまるでサークルみたい」と語った。
会議は「だらだら雑談してるような雰囲気」だという。「『きょうはこれこれについて考えること』というテーマはあるが、自由に日常を共にして、あれこれ一緒に検索してみるとアイデアが出てくる」と語った。後輩に仕事を任せたら、ナPDが結果にことさら手を加えることはないという。
■企画半分、偶然半分
ナPDは「100%以上を企画しても50%くらいしか充足されないときに、面白さが生まれる」と語ったことがある。しかしイPDは「『ユン食堂』は私が初めて企画した作品なので、70%以上は計画通りに進めたかった」と語った。結果は、まったく逆だった。「計画通りになった部分は30%もない」という。
制作陣では「キャストは、商売の方は適当に済ませて、うんと遊ぶ姿を見せるだろう」と予想していた。ところがキャストは実に真剣、情熱的な態度で商売に臨んだ。1カ月かけて苦労して仕上げた店が、たった一日商売しただけで、海岸の整理事業のせいで撤去されるとは思いもしなかった。ところがわずか一日で新しい店舗をぱっと完成させ、商売を再開した。いろいろな国籍の客が訪れるとも思わなかった。「どの国の言葉なのか分からず、翻訳していてかなり困った」という。
イPDは「台本も、方向性もなく、見知らぬ状況を開け放つことは制作陣としては不安だが、それによって『本物のドラマ』が得られる。キャストが、撮影だろうと思いながらも、全て忘れて実際のことみたいにのめりこめるようにするのが演出の技術」と語った。