▲2017年の法廷ドラマの砲門を開いた『被告人』(SBS)。自己最高視聴率(24.9%、ニールセン・コリア調べ)を記録した第14話で、家族を殺したという汚名を着せられ死刑囚になった元検事パク・チョンウ(チソン)は、自身の無罪を立証しようと脱獄を敢行した。/SBS

「世間は俺たちを見捨てない」

 さらわれた娘を取り戻した検事パク・チョンウ(チソン)が、今にも泣きだしそうな様子でこう語る。誘拐犯は大企業「チャミョン・グループ」の次男、チャ・ミンホ(オム・ギジュン)。双子の兄を殺し、兄のふりをして生きてきたチャ・ミンホは、自分の正体に気付いたパク・チョンウが捜査の網を狭めてくるや、彼の妻を殺し、娘を誘拐した。「娘を助けたければ、自分が家族を殺したと供述しろ」というチャ・ミンホの脅迫により、一夜にして死刑囚になったパク・チョンウは、脱獄した後、チャ・ミンホをわなにはめて娘を救い出した。ペーパーカンパニー設立の容疑で検察に緊急逮捕されたチャ・ミンホは、パク・チョンウが再審を請求したことで、殺人事件の真相まで露見する危機に直面した。

■「法廷ドラマの空襲」

 最終回まで残り4話の月火ドラマ『被告人』(SBS)が、3月7日に自己最高視聴率24.9%(ニールセン・コリア調べ)をマーク、熱い人気を集めている。財閥御曹司の脅迫や懐柔に遭っても正義を守ろうとしてわなにはめられた元検事の主人公が、自分の無罪を立証していくというあらすじのドラマだ。善玉・悪玉の息詰まるような知略対決に、緊張感あふれる展開、そして主役チソンの熱演で大ヒットした。

 『被告人』を筆頭に、今年上半期は数々の法廷ドラマが放送を控えている。『被告人』の後番組としては、チソンの実際の妻イ・ボヨンと、イ・サンユンが主役を演じる『耳打ち』(SBS、3月27日スタート)が放送される。チョ・スンウが3年ぶり、ぺ・ドゥナが7年ぶりにテレビドラマ復帰を果たす『秘密の森』(tvN)、チ・チャンウク&イ・ソンギョン主演『この女に気を付けて』(SBS、5月)、キム・ヨングァン&イ・シヨン主演『番人』(MBC、5月)も法廷ドラマだ。イ・ジョンソク&missAスジ主演『あなたが寝ている間に』(SBS)と、パク・シニャンの『町弁チョ・ドゥルホ』シーズン2もまた、今年中にお目見えする予定。昨年、KBS・MBC・SBSの地上波3社とtvNが放送した法廷ドラマが年間通して合計5本だったのと比較すると、まさしく「法廷ドラマの空襲」といえる番組編成だ。

■テレビ界に吹く「怒りの商業主義」

 法廷を題材にした正義ドラマの台頭には、政財界の癒着関係など腐敗した現実と、混乱した時局が反映されている。過去数カ月にわたる大統領弾劾政局で、裁判官や検事、財閥関係者が登場する法曹関連のニュースに絶えず触れてきた韓国の視聴者は、いつになく法廷を舞台にしたドラマに関心を示しているからだ。法廷ドラマは、「腐敗した権力との闘い」「正義の実現」という叙事的な典型をなぞりつつ、推理・ロマンス・笑いといった要素を加味して作品全体のカラーを決定する。視聴者は「最後は正義が勝つ」という勧善懲悪の帰結に、代理満足(自分ではかなえられない欲求を他者の行為により満たすこと)を得ることになる。

 政治検察や財閥の横暴を題材にして大衆の怒りを刺激してきた、いわゆる「怒りの商業主義」の流れは、まず映画界で始まった。『阿修羅』『マスター』『ザ・キング』『再審』など、検事や弁護士を登場させて不正に対する怒りを商業的にほぐしていく作品が次々と公開された。この流れがテレビ界に波及したと分析されている。

 ニュースや映画と同じ素材を扱うドラマに、視聴者が疲れを感じることもあり得る-という懸念も生じている。ある地上波テレビ局のプロデューサーは「上半期における法廷ドラマの攻撃的な編成には、いわゆる『崔順実(チェ・スンシル)問題』を通して不正を目にした視聴者の関心を、ヒットに結び付けようとする狙いがある。陳腐な善悪対決ばかりを見せたり、メッセージのない空虚な感情的快感ばかりに依存するのでは、ヒットは難しいだろう」と語った。

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