『Love Letter』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『リップヴァンウィンクルの花嫁』…繊細かつ個性あるストーリーで人気を集める岩井俊二監督(54)が、初の韓国映画に挑戦した。グローバルブランド「ネスレ」がコンセプトムービーをオンラインで公開する「ネスレ・シアター」と手を組み、短編4本からなる連作「チャンオクの手紙」を動画サイト「ユーチューブ」で公開した。作品はユーチューブ上で鑑賞できる。

 「チャンオクの手紙」の主人公は、2児の母でサラリーマンの夫を持つ専業主婦「ウナ」だ。韓国はもちろん日本、ハリウッドなど世界の舞台で活発に活躍しているぺ・ドゥナが主役を演じた。家事には何一つ手を貸さない夫(キム・ジュヒョク)を持ち、とげのある声を上げる姑(イ・ジュシル)の面倒までみなければならない主婦の孤独とストレスは、外国の監督が描いたとは信じられないほどリアルだ。そんなペ・ドゥナが温かい慰めを受け、家族と和解する瞬間は、温かい安らぎを伝える。

 「言葉の問題はあったが、いろいろ試行錯誤して問題を克服し、満足のいく作品を作ることができた」という岩井俊二監督に、スターニュースが書面でインタビューを行った。

 以下は一問一答。

-どうして今回のプロジェクトに参加することになったのか、気になる。

「前にも何回か一緒に作品を作ったネスレから、コーヒーの力をテーマに、ストーリーのある映画を表現してみるのはどうか、と相談があった。それで、悩んだ末に、家族間の愛を描くと同時に、家族間の対立をコーヒーが緩和するという内容展開を提案した」

-間違いなく日本の監督が脚本を書いて演出したのか、と思うほどリアルに迫って来る描写もある。岩井俊二監督が演出を手掛ける初の韓国映画といわれるが、それを知らなければ、韓国の監督が演出したと聞いても疑わないだろう。

「映画というもの自体が万国共通で、人間とは、言葉は違っていても感じることはほぼ同じだと思う。感情表現は、人間みんな同じようなものだ。そして、その表現から受ける感覚も似ている。日本人が感じる怒りの演技が、ほかの国で幸せな印象の演技に見えることはないだろう。私自身、それほど大きくは違わない範囲で演出したと思う」

-韓国語という異なる言葉を使う俳優をキャスティングして、韓国語の映画を作るということ。興味深いチャレンジでありつつ、容易ではないチャレンジでもあったはずだが。

「どうしても言葉が違うので、最初はコミュニケーションがかなり難しかった。ただ、逆に、言葉のほかは困難や違和感は全くなかった。一般的な日本人と韓国人は、話す言葉が違うだけで、そのほかは全く違わないと思う。たまたま今回韓国映画を作ることになったが、この機会を通して、この先どんな国の人とも一緒に映画を作ることができるだろうという自信が生まれ、次はほかの監督が挑戦しない何かに挑戦してみたい」

-ペ・ドゥナをはじめ、キャストの淡泊な演技も印象的だ。どういう理由でキャスティングしたのか?

「プロデューサーとキャスティングディレクターからいくつかアドバイスをもらいながら、慎重にキャスティングを進めた。彼らの推薦を受けて、最終的に日本でも認知度が高いペ・ドゥナを中心にキャスティングすることになった。これまでよく知らなかったが、ぺ・ドゥナはかなりナチュラルで、個性的で、立派な俳優だと思う。また、一緒に仕事をする間、穏やかな雰囲気を作ってくれるムードメーカー的な部分もあった」

-映画でペ・ドゥナは、本当においしそうにコーヒーを飲む。コーヒーはやすらぎでもあり、コミュニケーションでもあり、慰めだ。岩井俊二監督にとって、一杯のコーヒーとは。

「極端な状況にある主婦ペ・ドゥナが、どれほどつらく厳しい状況にあっても、『コーヒー』を飲むときくらいは全てを忘れ、本来の自分自身に戻るという意味を表現したかった。私にとって一杯のコーヒーは、時にはやすらぎを与えてくれる、時にはインスピレーションを刺激する、そういう存在にして瞬間」

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