ドラマ
まるで「サイダー」のようにすっきり、『キム課長』が大人気
横領専門という経理課長のドタバタ大企業ライフを描く『キム課長』(KBS)が、地上波テレビの水木ドラマ視聴率競争で先頭に立った。視聴率の上昇幅は、それこそ「高速昇進」に近い。7.8%(ニールセン・コリア調べ)から出発し、第3話が10%を突破、第4話は13.4%を記録して初の同時間帯トップとなった。今年上半期最高の期待作と評されている『師任堂 色の日記』(SBS)を上回ったのだ。また『キム課長』は、ニールセン・コリアとCJ E&Mが放送コンテンツを対象に行った1月第4週のコンテンツ影響力指数(CPI)調査でも、全テレビ番組の中で第1位になった。
■「サイダードラマ」で人気噴出
例えば、『キム課長』第4話の一場面。経験者として経理部に入ったばかりのキム・ソンリョン課長(ナムグン・ミン)が、傍若無人な会長の息子(ドンハ)と対決した。法人カードで浪費した945万ウォンを経費として処理しろと言われ、「ホテルのスイートルーム」「クラブ」「ブランド売り場」など、業務との関連が見出せない支出内容を、社員が見ている前で次々とばらし、ひどい目に遭わせる。「#サイダー」というハッシュタグが付いたこのクリップ(ハイライト映像)は、ポータルサイトでわずか2日のうちに25万回も再生された。
『キム課長』の浮上は、このところの「サイダーコンテンツ」ブームと軌を一にしている。「サイダー」とは、コンテンツに対する大衆の好評を単純化した表現。胸がすっきりする「サイダー」のように、視聴者に痛快な気分を味わわせてくれるコンテンツに付けられる愛称だ。素早い展開、分かりやすいキャラクター、はっきりしたメッセージなど、出来のいいドラマが備えるべきテンポや完成度などがこの一語に集約されている。逆に重苦しい展開が続くと、食べれば食べるほど胸につかえるという意味で「サツマイモ」という評価が付く。
番組でキム課長とユン・ハギョン(ナム・サンミ)は、おじさん上司に「言うべきことを全て言う」キャラクターとして登場する。直言が消えた社会、めちゃくちゃな国内情勢、不条理を黙殺する会社の姿など、あちこちで目の当たりにする「サツマイモ」のような現実に疲れを感じている大衆は、「サイダーコンテンツ」を通して代理満足(自分ではかなえられない欲求を他社の行為により満たすこと)を感じる。番組を手掛けるロゴス・フィルムの関係者は「視聴者の気分をすっきりさせる『サイダー・コード』を混ぜ込んだことが、仕事場を舞台にした『キム課長』ヒットの原動力」と語った。
■憎めないナムグン・ミンの好演
視聴率逆転の主役はナムグン・ミンだ。放送前、『キム課長』の先行きは明るくなかった。素材自体に目新しさがない上、『師任堂』のイ・ヨンエ、ソン・スンホンに比べ、主演俳優の認知度は低かったからだ。しかし、ナムグン・ミンの好演で劣勢をひっくり返した。番組でキム課長は、凍った路面で滑ったどさくさで人助けをすることになり、義人賞をもらう。その「有名税」を利用して人の歓心を買い、会社の公金を横領する計画を立てるという機会主義的な人物なのだが、ナムグン・ミンは、キム課長を「憎めないキャラ」に昇華させた。こざかしい会社員の役を完璧にこなし、30-40代の視聴者の共感を引き出すと共に、素材の陳腐さすら拭い去った。今後のストーリーも、一儲けたくらんで大企業に入り込んだはずのキム課長が、あべこべに社内の不義と戦い、ガタガタになりつつある会社をよみがえらせる-という筋書き。全20話の『キム課長』から気が抜けることなく、ぽんぽんと打ち出す「サイダー」展開をラストまで維持できるかどうかが今後のカギになる。