▲tvnのバラエティー『新婚日記』は、江原道麟蹄の田舎にあるこぢんまりとした一軒家を舞台に、リアル夫婦のク・ヘソン(左)、アン・ジェヒョン(右)と犬3匹、猫3匹の甘い日常を描いた番組。/写真=tvN

 どっさり雪が積もった山村、人里離れて建つ赤い屋根の家で、金儲けもせず、誰の干渉も受けずに愛する人と暮らす。tvNのバラエティー番組『新婚日記』は、誰でも一度は夢見たことがあるはずの風景を描いてみせる。昨年5月に結婚した2人の俳優、ク・ヘソン(32)とアン・ジェヒョン(29)が主人公だ。制作陣の要請を受け、半月にわたり犬・猫を連れて江原道麟蹄に滞在するリアル夫婦は、料理をして、買い物をして、ピアノを弾き、散歩し、時には何でもないことですねたりして時を過ごす。

 有名プロデューサー(PD)のナ・ヨンソクがひさびさに手掛ける新番組。全5話予定の同番組は、第2話(金曜夜9時30分)までの時点で視聴率5%台を記録した。善男善女の日常的な関係や対話、対立などが、美しい映像と音楽の中で静かに映し出される。ナPDの得意技が生きた番組だ。

 タイトルから予想されるとおり、新婚とは甘いもの。お互い、頭の匂いをかいでもおならをしても、愛しくて夢中になるものだ。まずそうに見える料理にも賞賛を雨のように降らせる。伝統的な性役割がひっくり返ったかのような2人の関係も興味深い。タフなク・ヘソンが外に出て薪を探してきて、繊細なアン・ジェヒョンは言葉の端々にも愛情をたっぷりと盛る。「あんな女、すごくいい」という男性視聴者はもちろん、「こんな男と暮らしたい」という女性視聴者も多い。

 とはいえ放送が進むにつれ、退屈で、どうも腑に落ちない。爆笑が起こる面白みも、胸に深々と染み入る感動もないからではない。リアル夫婦の「リアル」な新婚生活を見せるといいつつ、この夫婦がなぜ山村の人里離れた家で過ごすのか、その設定から理解ができない。

 『新婚日記』は、ナPDの前作『三度の食事』の延長線上にある。『三度の食事』は、山村や島に行った芸能人が、一日三度の食事のために孤軍奮闘する姿を描いた。大したことはないように感じてきた一日三度の食事に、実は大変な愛情と労働が必要なのだということを、自ずと悟らせる番組だった。自然の中で、ひたすら食事の用意をして食べることにのみ気を遣えばいい暮らしを見ながら、視聴者は安息を得た。

 『新婚日記』も、絵に出てくるような田舎の家を舞台に、新婚というものがどれほど美しいか、いかに努力を必要とするか、その本質を見せようとしたのだろう。しかし普段の生活の現場から遠く離れたことで、新婚はファンタジーになってしまい、夫婦間の対話も空しく空回りしてしまった。

「生活を成り立たせる苦労や、それに伴う家事配分の対立、ほかの家族との微妙な関係などを全て排除していったら、結婚生活には一体何が残るのだろうか。2話に『結婚は現実だ』という大きなタイトルが付いたので期待したが、ままごとのような対話が続いただけ」

「甘いということを除くと、それ以上展開するストーリーがないように見える。お菓子でイベントをやって、色紙でツルを折り、ピアノまで弾く姿に、20代独身の男として疲れを感じた。新婚とは大体、『ごま塩』よりも『トウガラシ』の方がよく飛ぶものであって、けんかしては仲直りするという形で激しく過ごす時期だ。独身女性がこの番組を見て、結婚に幻想を抱くのだろうかと密かに心配になる」

 『新婚日記』は、現実とファンタジーの境を曖昧にまたいでいる。ここに拒否感が生まれる。放送前、制作陣は「キャストは2人だけで、ミッションはなく、面白さは保証できないかもしれないが、結婚していようといまいと、視聴者が共感できる部分は多いはず」とコメントしていた。共感が核心にあるという意味だが、ならばなぜ「自分のこと」のように思えないのか、そこが問題だ。

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