ある人は「クリスマスの奇跡」と呼んだ。12月24日夜、歌手のキム・ジョンミン(37)が「芸能大夫」ユ・ジェソク、シン・ドンヨプ、イ・フィジェ、キム・ジュノなどを抑えてKBS演芸大賞に輝いた。バラエティー番組『ハッピーサンデー』(KBS2)内の人気コーナー「1泊2日」を10年守ってきた功績を認められたのだ。

 キム・ジョンミンは、シーズン1からシーズン3までずっと通して出演した唯一のメンバーだ。兵役中の2年間は番組を離れたが、除隊した日にすぐさま「拉致」され、撮影に放り込まれた。12月26日、ソウル市ノンヒョン洞のカフェでキム・ジョンミンと会った。彼は「話にならないことが起こった」と語った。

「僕は才能も足りないし、弁才もない。受賞の所感も準備はしましたが、しゃれたことをしゃれた風に話せる自信はなかったんです。感謝したい人の名前だけ呼びました」。彼が大賞候補に上ったというニュースだけで、既に大変な話題だった。主役を輝かせる役割ばかり長年誠実にこなしてきた「万年助演」に、応援が降り注いだ。キム・ジョンミンは「僕が賞を取ることを、僕より周りの人の方が望んでいて、賞をもらってからも周りの人の方が喜んだ」と語った。

 実際キム・ジョンミンは、彼自身の言うとおり「しゃれている」のとは少々隔たりがある。しばしば突拍子もない言動や行動を取り、よく分からないときは「分からない」と素直に言うので、「おバカ」という別名で呼ばれた。とはいえ、2000年に混声グループ「コヨーテ」でデビューして以来、恥さらしな事態に巻き込まれることもなく、持ち場を守ってきた。ひょっとすると、これが非常にまれな才能なのかもしれない。常に飾り気なく明るく笑い、何であろうと手を抜かずにやり、悪いうわさのない代表的な芸能人に挙げられる。

「足りない僕を常に周りの人々が抱擁し、助けてくれました。つんつんしていたら、同僚が一言だけでも声をかけてくれました」。キム・ジョンミンは「おバカという呼び名で気分を害したことは一度もありませんでした。おかげで人々が、僕を見ただけで明るく笑ってくれるんですから」と語った。

 キム・ジョンミンも、一時「面白くない」という批判に苦しんだ。辞めるかどうかの岐路に立ったことも多かったが「これまで導いてくれた人々を失望させられないという思いで耐えた」と語った。「怖気づいて、何かあるたび、間違いをやらないように大層気を付けました。だからまだ結婚できないんだと思います」。

 ときどき九九のクイズも間違えたりするキム・ジョンミンだが、最近、安重根(アン・ジュングン)の生年月日や金九(キム・グ)の名言といった歴史クイズをすらすらと当てて話題を集めた。秘訣は、歴史講義の動画視聴。これもまた、徹底した自己管理から始まった。「仕事が終わらないとき、『尊敬する先輩方ならどうするだろうか』と考えてみます。それがだんだん発展して、『歴史の中の偉人は、困難な状況をどのように克服したのか』探ってみるようになったんです。人生の答えが、既に歴史の中にあるということは多かったですね」。

 キム・ジョンミンは時計工場やカレンダー工場でアルバイトして、豊かとはいえない青少年時代を過ごした。ダンスが好きで、友人たちとイベント会社に入り、バックダンサーになった。デビュー時もコヨーテの正式メンバーではなく、客員メンバーだった。それから16年、出演した芸能番組は160本を超える。

 キム・ジョンミンは「僕の力ではここまで来れなかった。僕は本当に運のいい人間」と語った。後輩たちには、しばしばこんな助言をしている。「『こんなことまでやらないといけないのか』と思うことでも、一生懸命やれ。止めなければ、チャンスは来る」。大賞まで取ったのだから、「かっこいい」主人公になっていってもいいのではないか? すると彼は手を振った。「もっと腰を低くして、もっと悪い役をやるでしょう。そうすると、16年くらい後に、また大賞をもらえるかもしれませんからね」。

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