映画俳優のユ・ヘジン(46)がコメディ映画に戻ってきた。昨年公開された『あいつだ』以来、1年ぶり。公開がかぶった作品がどっと押し寄せ、またあちこちの作品にちらちら出演もしていると言って、ユ・ヘジンは照れくさそうに笑った。

 ユ・ヘジンは、映画『LUCK-KEY』(イ・ゲビョク監督)試写会翌日の10月5日、ソウル市鍾路区三清洞のカフェで同作のインタビューに臨んだ。『LUCK-KEY』は、公衆浴場のカギが原因でカリスマキラーから無名の俳優へと運命が変わってしまい、そこで起こる事件を描いたコメディー映画。日本映画『鍵泥棒のメソッド』のリメイク作だ。

 ユ・ヘジンは同作で、キラーだったのに記憶喪失になってしまい、無名俳優として生きていく。真剣なキラーの雰囲気はそのままだが、自分が無名の俳優だと信じて、真剣に演技をする姿が印象的だ。

「実際、映画の中の無名俳優ジェソンは、僕が自分の体で経験してきたこと。僕とすごく似ているんです。当時はボールペンを使って発声練習をしたり、公園に行って走ったり、そんな感じでした。僕は(ソウル市麻浦区)アヒョン洞の屋根裏部屋に身を寄せていたことがあるんです。映画に出てくるジェソンの家と、すごくよく似ています。なので、撮影しながら昔のことをかなり思い出しました」

 1997年に映画『ブラックジャック』に出演し、本格的に映画俳優として生きるようになったユ・ヘジン。今では顔を知らぬ者はいないほど愛されているユ・ヘジンだが、そんな彼にも、胸が熱かった無名時代があった。月極の家賃を払って暮らしていた当時、家主がユ・ヘジンのことを知らず、彼が出演した映画を見てはじめて俳優だと知った-というエピソードを披露し、昔のことをじっくり振り返った。

「友人宅頼みの暮らしを続けて、初めて独立したのがたぶん15年前くらいのこと。俳優生活駆け出しで、当時、家主のおじいさんは僕のことを知りませんでした。出勤するようでもなく、ときどき朝方に戻ってきて、家賃はきちんきちんと払うので『何をやってるやつなんだ』と思っていたことでしょう。そのころ、中秋節くらいに僕が出演した『MUSA -武士-』が公開されたんです。あるとき、家主のお嬢さんが、おじいさんと一緒に劇場へ出かけました。それで家主が僕のことを知ったんです。ははは。そんな経験が、無名俳優ジェソンを表現するとき、ちょっとした心付けになったようです」

 ユ・ヘジンは『LUCK-KEY』で、自分が普段考えてもみなかった夢(?)をかなえた。女優チョ・ユニ、チョン・ヘビンとのキスシーンだ。ユ・ヘジンは制作報告会で、感謝すると共に「申し訳ない」とも語り、笑いを誘った。さらにユ・ヘジンは劇中、キスシーンだけでなくチョ・ユニと恋愛演技も繰り広げ、注目を集めた。そこまでやったのだから、ついでに正統派恋愛映画に挑戦するという欲はないか、きいてみた。

「実際、恋愛の演技は少し負担になることはあります。僕は恋愛ものをあまりやってみたことがないので、心配です。正直言って、ちょっとぎごちない表現になるんじゃないかと思って、それが悩みです。話がうまく進めばぎごちなくはないだろうけれど、追いかけ損ねたらぎごちないですよね。けれど、自分に合った恋愛ものなら大丈夫だろうと思います。単純な恋愛ものというジャンルにとどまらない、ドラマだという気がしますね。私のところにうじゃうじゃ集まってくるものはなさそうですが、似合いの状況でぎごちなくなければ、やる気はあります」

 小さな端役や助演からスタートして、今や堂々と主人公ポストをつかんだユ・ヘジン。後輩の俳優たちと一緒に映画を引っ張り、興行について負担はなかったかと尋ねた。

「映画の興行への負担はあります。僕が助演であれ主演であれ、どういう作品をやるのであれ同じだろうと思います。作品さえ良ければいいというものではないでしょう。映画1本には、多くの方が関わっています。スタッフ・スポンサーの苦労を、観客数が少しでも埋めてくれればと思っています。もちろんそれが全てではないですが、ちょっとやりがいを感じるくらいにはなってくれれば、という負担はありますね。損益分岐点さえ超えればいいんですよ。観客がどれだけ入ったらいいのかという質問なら、損をせず、笑える程度であればいいですね」

 俳優として最高の演技、そして謙虚な態度で愛されているユ・ヘジン。彼に、俳優としての鉄則はあるかと尋ねた。彼は、ユ・ヘジンという名前の前に「俳優」という修飾語を付けても恥ずかしくない人間になりたい、と答えた。

「僕が、どこかに行って『俳優ユ・ヘジンです』とあいさつしたとき、周りの人が『あの人、まだ俳優だなんて言ってるよ』ということにはならないようにしたいです」

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