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新海誠監督の『君の名は』、釜山国際映画祭で韓国初公開
「ちゃんと仕舞っておきなさい。夢というものは、覚めたら消えてしまうのだから」。東京から離れた湖畔の美しい田舎町「糸守」の女子高生・三葉に向かって、神社の巫女を務める祖母がこう語る。三葉は、目が覚めてみると、東京都心に暮らす同い年の男子高校生・瀧と体が入れ替わっていた。映画は、愉快なコメディタッチのティーンズファンタジーとして始まるが、1200年ぶりに地球へやって来る彗星がきっかけで時空間がゆがみ、人と縁、善意と災難が行き交う物語へと拡大していく。
日本で観客動員1000万、興行収益129億円以上(10月第1週基準)を記録し、6週続けてボックスオフィスのトップを走り続けているアニメーション映画『君の名は』が9日、釜山国際映画祭(BIFF)で初めて韓国の観客に披露された。「次世代の宮崎駿」に挙げられる日本のアニメーションの名匠、新海誠監督の新作だ。BIFF組織委は当初、オープニング作品を『君の名は』と韓国映画『春夢』(チャン・リュル監督)のどちらにするか悩んできた。アジア映画担当のキム・ヨンウ・プログラマーは「新海監督も『BIFFのオープニング作品であれば、公開を遅らせたい』と言っていて、プログラマーの悩みは大きかった。それほどに作品性と大衆性を兼ね備えた、稀な映画」と語った。
『ほしのこえ』(2002)、『秒速5センチメートル』(2007)などの作品で、届きそうで届かない絆の物語を描き、観客を魅了してきた新海監督は、今回の映画で東日本大震災がもたらした傷をいたわった。震災後、日本人は日常の恐怖と向き合っている。新海監督は9日の記者会見で「震災後、多くの人の祈りと願いを感じた。生きていてくれれば、幸せでいてくれればという人々の願いを集めてスクリーンに描き出したいという気持ちで、劇場を出るとき幸せに笑える映画を作った」と語った。
いつもそうであったように、新海監督の細密画は厳かだが、強い吸引力を持つ。手ぶりや眼差しでキャラクターの感情の動きを表現する作話法は、一段と洗練された。行き交う電車や少年・少女の跳躍などで観客の感情を高揚させる交差編集も、さらに鋭くなった。ビルの上を流れる日の光や雲、夕暮れ時に湖の水面が放つきらめきといった場面では、なぜ新海監督が光と色彩を扱う上で「名匠の境地に至った」と評されているかが分かる。
この日、『君の名は』のチケットを購入するため、BIFFの3カ所のチケット売り場ではおよそ300人の観客が徹夜をした。計730席のうち窓口販売分179席は、9日朝にチケット売り場がオープンしてからわずか7分で売り切れた。本作を輸入したメディアキャッスルは「来年1月に300館程度の規模で公開する予定」とコメントした。