スターインタビュー
インタビュー:パク・チャヌク監督に見いだされた新人女優キム・テリ
映画『アガシ』の伯爵(ハ・ジョンウ)は、メイドのスクヒ(キム・テリ)について、このように表現した。「ハツカネズミのような、われわれのスクヒ」。幼く、弱々しい上に、日焼けした顔、そしていつも黒い瞳を輝かせ周りを見ているので、そう言われるのは道理でもある。ところがこの「ハツカネズミ」は、いつであろうとネコに食いつけるほどしっかりしていた。メイドとして働いている家の主人が大切にしている本を、残らずだめにしやしないか、その家の令嬢を連れて、塀を越えて逃げようとしやしないか。スクヒが仕えていた令嬢の秀子(キム・ミニ)は、スクヒのことをこう表現した。「私の人生をだめにしに来た、私の救い手。私のスクヒ」。
パク・チャヌク監督が、『アガシ』のオーディションを受けに来た1500人の女優の中から新人キム・テリ(26)をスクヒ役に選ぶ上で、キム・テリの黒い瞳は役に立ったことだろう。キム・テリは、その瞳を輝かせて、常に何事かを尋ねる。『アガシ』がカンヌ国際映画祭公式コンペティション部門に招待され、フランス・カンヌに向かった際、キム・テリは記者に「競争するほかの作品は、どうすれば見ることができるか」「カンヌの近くのどこへ遊びに行けばいいか」「どの映画が一番面白いか」としきりに質問した。パク監督も「キム・テリは、させた通りに素直にやる性格ではないので気に入った。自分の考えを率直に口にして、全くはばかるところがない。現場でも『それはなぜ? よく理解できない』という質問をしていた」と語った。
パク監督の言葉を伝えると、キム・テリは「あはは」と声を上げて笑った。キム・テリは「映画の撮影は初めてだったから、現場になじむのにかなり努力が必要で、カメラの原理を把握するのにもかなり時間がかかった。萎縮(いしゅく)しないように、かなり努力した。監督さんはもともと対話を好む方で、監督さんとそういう対話を交わすのが楽しかったので、かなり質問した。知ってこそ、もっとよく理解ができるので。させられる通りにだけやるのでは、自分がよく知りもしない形で結論付けてしまうことになる」と考えた。
「みんな現場で、私がしっかりしていて堂々としているように見えたといいますが、実際は口も開けず緊張していました。みんな私にだまされたんです。心の中ではかなり不安を抱えて、震えていました。先輩たちは『よくやってる、よくやってる』と言ってくれたけれど、私自身は『私がうまくやってるというのは本当?』と、自問していました。誰にも頼らず克服する方なので、一人でかなり努力しました。実際は、今でもそんなふうに(私がうまくやっているというのは本当?)思っています。経験もなく、システマチックでもなく、余裕もない、そんな部分が演技に少し出たのではないか、と思います」
パク監督は、『アガシ』のオーディションで、キム・テリが「落ち着いていて、冷静沈着だった」と語った。キム・テリは「うまくやろうと欲張ることはしなかった。その日にかぎって気は楽で、運もついてきてくれた」と語った。『アガシ』以前のキム・テリは「オーディションに何回も落ちた」という。慶煕大学新聞放送学科に入学後、「楽しくて意味のある大学生活」のために入った演劇サークルで、キム・テリは女優になると心に決めた。大学卒業後、大学路の小さな劇団に入った。現在一緒に暮らしている祖母は、『アガシ』を見る前、気持ちを落ち着かせる薬を飲んだ。しかし映画を見た後、祖母はキム・テリに「ご苦労さま」と言った。キム・テリは「演技を始めたのは、ささいな理由から。面白いので。まだ演技の経験が特にないため、どういう女優になるのか、考えることもできない」と語った。
「カンヌの近くの島に行って、散歩するときに思い浮かびました。空はとても高くて、青くて、長い道に私一人しかいませんでした。そのとき、小さくて、混雑している韓国のことが思い浮かびました。私の演技が、毎日毎日きゅうくつな日常を送る人のねぎらいになればいいと」