スターインタビュー
インタビュー:挫折を味わったシム・ウンギョン、新作でイメチェン
猿も木から落ちる。人も同じだ。優れた人も困難にぶつかると倒れ、一瞬にしてどん底に落ちるかもしれない。だからこそ、“運”を無視できない作品世界の中の人々、俳優という職業の人々は浮き沈みが激しい。
シム・ウンギョンも例外ではない。彼女は映画『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)で、子役俳優によくある成長痛を克服し、『王になった男』(2012年)で観客動員数1000万人を突破する喜びを経験。『怪しい彼女』(2014年)で、映画館の未来を担う20代の女優として勢いに乗った。ドラマ『のだめカンタービレ~ネイル カンタービレ』(2014年・以下、『ネイル カンタービレ』)はそのピークを迎えているようだった。原作の日本漫画『のだめカンタービレ』は韓国でもファンが多かった。何人かの女優が主人公候補に挙がったが、根強いファンの影響力で出演には至らなかった。シム・ウンギョンはファンが望んでいた主人公。彼女の出演が確定したとき、雰囲気的には半分は成功したようにみえた。ところが、そのような期待はほんのわずか。『ネイル カンタービレ』は初回放送後、原作との比較を避けられず、不調に終わった。
「自分に冷たい人でした。子役のときから演技をしていたので、完璧にうまくやらなければいけないという強迫観念のようなものがありました。周りから“今の年齢でできることを楽しめ”“ちょっと恋愛もしろ”と言われると、わたしのために言っているのに、否定的に聞こえて、理解ができなかったんです。芸術をするうえで、完璧というのはありえないことなのに、欲が出たみたいです」
完璧を追求してきたシム・ウンギョンに、『ネイル カンタービレ』は挫折感を抱かせた。彼女は「自分とは合わない選択をした」と自分が欲を出したからだとし、作品の失敗を自分のせいにした。そうしながら自分を振り返り、成長していくことができた。わずか少し前まで、ひたすら演技だけに集中していたが、今は一人で地下鉄を利用し、一人旅をするなど、自分に投資する時間が増えた。最近では、そのような時間のおかげで余裕が生まれ、結果的に演技に役立っているということを感じているという。シム・ウンギョンは「10代のときは、演技だけをしていたせいで、思春期も遅れて経験した」と笑った。
シム・ウンギョンは、3月10日に映画『君を待ちながら』(モ・ホンジン監督)が公開。同作は父親を殺した犯人を追う少女、友人を殺した犯人を追う刑事、そして自分のことを情報提供した誰かを追う殺人犯の物語だ。シム・ウンギョンは殺人犯を追うヒジュ役を演じ、純粋さと残忍さが共存する多面的な人物を演じた。善と悪の境界がはっきりしていない人物なので、演じるのに難しさを感じた。
「ヒジュが“ソシオパス”(反社会的人格障害の一種)に近い複合的な人物なので、表現するのが簡単ではなかったです。善と悪、二面性を極端に見せるような演技はしたくなかったんですよ。問題はいくら悩んでも、明快な答えが出なかったこと。その後は、心を空っぽにして、撮影をしながら、現場でその都度感じたままを演技で表現しました。今まで見せたことのないキャラクターなので、観客にどう映るのか心配もありますが、楽しみでもあります」